健康をサポートする住まいのかたち(前編)商品・トレンド,ハウスメーカー
少子高齢化が急速に進む日本にあって、減少する子どもを健康に育てること、そして増加する高齢者は増大する社会保障費を抑制するという観点から、長く健康であり続けることが必要とされています。
一日のうち多くの時間を過ごす住まいは、そこに住む家族の健康状態と密接に関わっていると言われます。90年代以降は建材に含まれる化学物質によって引き起こされる健康被害として、シックハウス症候群が大きな問題となっていました。
住宅リフォーム・紛争処理支援センターによれば、
近年のシックハウス症候群に関する相談件数は2000年頃から比べると
4分の1まで減少し、相談全体に占める割合も10%から1%未満まで
減ってきていると言います。
シックハウスが完全になくなったわけではないにせよ、
住宅を建てることで発生する住まいそのものから受ける健康リスクは、
徐々にクリアしつつあるというのが現状ではないかと思います。
次の段階となるのが、外部から受ける健康リスクの軽減です。
花粉やPM2.5など大気に含まれるアレルゲンや有害物質に加えて、
住宅の高気密高断熱化が進んだことでダニやカビ、
ゴキブリが繁殖しやすく、室内塵が出やすい環境となりました。
国内でアレルギーや喘息の患者が増加を続けているのは、
こうした有害物質を体内に取り込んでいるからとの指摘もあります。
そこで今回は、私達がより健康であるために
住まいづくりからできることを考えていきたいと思います。
■ アレルギー、喘息抑える空気のデザイン
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2008年に日本アレルギー協会が全国の耳鼻科医とその家族に対して
行った調査によれば、アレルギー性鼻炎の患者は10年間で
下記のように推移しています。
アレルギー性鼻炎全体 29.8%→39.4%
花粉症全体 19.6%→29.8%
スギ以外の花粉症 10.9%→15.4%
スギ花粉症 16.2%→26.5%
通年性アレルギー性鼻炎 18.7%→23.4%
この傾向は現在も大きく変化していないと言われ、
喘息患者と共に未だ国内では増加し続けていると言われています。
こうしたアレルギー性鼻炎や喘息の主な原因となるのが、
花粉やハウスダスト、ダニです。
これらの対策として現在メーカー各社で積極的に行われている対策が、
換気システムのフィルター性能強化です。
例えばパナホームが2014年9月に発売した「エココルディスII」では、
空気の質にこだわった
「エコナビ搭載システムHEPA+」を搭載しています。
パナホームでは従来から外気を床下空間に取り込んで
沈降作用で空気を浄化するという床下換気を取り入れていましたが、
今回床下で浄化した空気を更にきれいにするために、
換気システムにHEPAフィルターという新たなフィルターを採用しました。
HEPAフィルターは、JIS規格によって
「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して
99.97%以上の粒子捕集率を持つもの」と規定されています。
空気清浄機や家庭用掃除機のハイエンドモデルのほか、
クリーンルームの精密空調機器にも採用されています。
スギ花粉の大きさは30μm、黄砂は4μm、
PM2.5はその名前の通り2.5μm以下の微粒子で、
これらの有害物質についてはほぼ100%に近い捕集率。
PM2.5の中でもより危険とされる0.5μm以下の微粒子
PM0.5にも対応しています。
外部の有害物質を遮断するために住まいの高気密化は
特に重要な項目ですが、前述したように気密性をアップさせることで
ダニやカビ等の発生リスクも増します。
ただ住宅性能を向上させるのではなく、
室内の空気環境を適切に保つという考えのもと、
気密性や換気システム、空気の出入り口や流れ方の設計などを考慮した
空気のデザインがこれからの住宅にはより求められることになります。
(情報提供:住宅産業研究所)