空き家問題を解決する新ビジネス(前編)業界ニュース,市場動向,ハウスメーカー
高齢化や核家族化に伴い、居住世帯が長期にわたり不在で、適切に管理されていない空き家が全国各地で増え続け、社会問題化しています。
総務省が発表した住宅・土地統計調査によると、2013年10月の時点で、全国の空き家数は約820万戸に上り、国内の住宅総数に占める空き家の割合は、13.5%となり、過去最高を記録しました。
一方、野村総研が発表した将来予測では、、、
2030年度までに新設住宅着工数は
53万戸程度に減少するとされるものの、
新設住宅着工数の減少を上回るスピードで
世帯数もまた減少すると見込まれています。
今後、既存住宅の除却や、住宅用途以外への有効活用が
進まなければ、2033年の総住宅数は約7,100万戸へと増大し、
その内の空き家数は約2,150万戸、
空き家率は30.2%にも上ると予測されています。
管理が不十分な空き家を放置すると、
倒壊の危険や治安悪化といった、
空き家周辺の環境にも悪影響を及ぼすことが考えられます。
増え続ける空き家問題を解決するため、
国も空き家の解消を進める対策に本腰を入れ始めました。
空き家問題を解決する第一歩として、
国は「空き家対策特別措置法」を5月26日から全面施行しました。
従来の空き家対策は各自治体によって行われており、
空き家の所有者を探して指導を行ったり、
倒壊の危険がある空き家の場合は、
条例を制定し強制的に建物を撤去する等の対応が取られてきました。
今回の空き家対策特措法は、国の法律であり、
これまで各自治体が行ってきた空き家対策が
国を挙げて行われるということになります。
空き家対策特措法では、市町村の権限として、
倒壊の恐れや衛生上の問題がある「特定空き家」に当たるかを判断し、
改善を所有者に助言、勧告、命令することなどを規定しています。
2月から一部施行されており、市町村が協議会を設立し、
相談体制を整備するなどの対応が取られてきました。
特定空き家に認定される基準としては、以下のものがあります。
1)基礎や屋根、外壁などに問題があり、倒壊の危険があるもの
2)ごみの放置などで衛生上有害なもの
3)適切な管理が行われておらず、著しく景観を損なうもの
4)その他周辺環境の保全を図るために放置することが不適切なもの
特定空き家と認定されると、物件の所有者に対して
修繕や撤去の指導や勧告、命令が出来るようなります。
命令に従わない場合には、市町村が代わりに強制撤去し、
かかった費用を所有者に請求出来る
「代執行」も可能となっています。
■ 企業も空き家ビジネスへ相次ぎ参入
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空き家対策特措法が全面施行されたことにより、
企業の空き家関連ビジネスへの新規参入が相次いでいます。
空き家対策特措法によって特定空き家に認定された場合は、
物件の強制撤去もあり得るため、
これまで放置していた空き家の管理に頭を悩ませる
オーナーが増えることが予想されます。
そこで、遠方に住んでいるなどの理由から、
十分に空き家の管理を行うことが出来ないオーナーに代わり、
物件の点検を行う巡回サービスなどを新たに始める企業が
増えています。
大和ハウス工業のグループ会社である日本住宅流通は、
大和ライフネクストと連携し、
空き家の活用方法に悩むオーナー向けに、
代理で定期巡回などを行う
「空き家巡回サービス」を近畿圏で開始しました。
対象エリアは、大阪、兵庫、京都、奈良、
滋賀の戸建て住宅と分譲マンションです。
サービスの内容は、日本住宅流通と空き家のオーナーとの契約が
締結すると、月に1回程度、大和ライフネクストの職員が
通気や清掃などの巡回業務を行うというものです。
また、サービスを利用するオーナーには、
巡回結果をもとに賃貸やリフォーム、
売却などの提案も行っていきます。
利用料金は、戸建て住宅が月額9,720円、
分譲マンションが5,400円となっており、同社では、
初年度受注100戸を目標にしています。
今後は、首都圏での展開も計画しているということです。
次回は、企業のグループ内で連携し、
空き家オーナーの悩みにワンストップで対応する企業や、
官民が一体となって空き家解消に取り組む事例について
ご紹介します。
(情報提供:住宅産業研究所)