2014年度住宅着工動向(前編)業界ニュース,市場動向,ハウスメーカー
消費増税駆け込み需要の反動による住宅着工戸数の減少は2014年3月から始まり、今年3月に微増(0.7%増)に転じるまで、12ヶ月連続で前年同月を下回り続けました。
結果、2014年度の総着工数は88万470戸、前年比▲10.8%の減少。2013年度は前年比10.6%の増加でしたから、「増えた分だけ減った」ということになります。しかし、「一昨年の水準に戻っただけ」と楽観していると、足元をすくわれかねません。
利用関係別に着工戸数の内訳とその増減率を算出すると、状況の深刻さが見えてきます。
◇2014年度住宅着工戸数内訳及び前年比増減率
※表が見難い方はコチラからご確認ください
持家 27万8221戸 (▲21.1%)
低層分譲(建売住宅) 12万7139戸 (▲ 7.4%)
中高層分譲(マンション)10万8903戸 (▲10.6%)
低層貸家(アパート) 24万3321戸 (+ 2.6%)
中高層貸家 12万2886戸 (▲11.0%)
※国土交通省 住宅着工統計より
(貸家には社宅等の給与住宅を含む)
半年前、このメールマガジンで14年度上半期の着工を取り上げた際、
14年度通期の持家着工を27.7万戸と予測しました。
またこの数値は、1962年以来初めて30万戸を下回った
リーマンショック直後の2009年度(28.7万戸)さえも
下回る戸数であるともお話ししたと思います。
実際には27.8万戸と予測値を僅かに上回ったものの、
この半世紀の最低戸数を記録しました。
建売住宅は▲7.4%と1桁減にとどまりましたが、
14年8月〜15年1月は6ヶ月連続で2桁減を記録。
上半期時点では前年比▲6.0%でしたが、
下半期は減少幅を拡大させました。
一方マンションは、上半期には前年比▲21.4%と持家同様の
落ち込みを見せていましたが、下半期は回復に転じ、
▲10.6%まで改善。
15年度に入ってからは、4月に1万1000戸(前年比24.8%増)、
首都圏だけで見ると約7000戸で前年同月の2倍以上と、
スタートダッシュを見せています。
貸家系は低層(前年比2.6%増)と中高層(同▲11.0%)で
明暗が分かれました。
相続税改正で新たに課税対象となる、
富裕層とまではいかないアッパーマス層あたりの小規模土地活用が、
住宅着工数の下支えとなっているようです。
大手メーカーやアパート専業業者は、
まだまだこの層に開拓の余地があると見て、
セミナー等、積極的な集客活動を展開しています。
■ 持家着工は15ヶ月連続減
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持家は、駆け込みの山(11.5%増)に比べて
反動減の谷(▲21.1%)がかなり深くなりました。
また、着工総数が0.7%増とプラスに転じた今年3月以降も
持家の減少は続き、2014年2月から今年4月まで
15ヶ月連続のマイナスとなりました。
直近の5月には前年比1.1%増と連続減から脱却したものの、
駆け込みや反動減が発生する前の2012年5月と比較すると
▲11.5%。本格的な回復とは言い難い状況です。
持家について地域別・工法別に14年度の着工動向を見てみましょう。
◇2014年度地域別持家着工数及び前年比増減率(単位:千戸/%)
※表が見難い方はコチラからご確認ください
全持家 在来木造 2×4 プレハブ
地域 戸数/増減率 戸数/増減率 戸数/増減率 戸数/増減率
全国 278.22/▲21.1 193.68/▲21.9 31.21/▲17.9 46.82/▲18.5
北海道 10.60/▲20.3 6.60/▲22.8 2.97/▲17.0 0.97/▲10.5
東北 27.57/▲19.6 21.18/▲20.1 3.35/▲12.6 2.85/▲23.2
北関東 21.97/▲22.6 15.92/▲23.5 2.55/▲17.9 3.33/▲21.2
首都圏 59.85/▲20.7 37.74/▲21.3 8.78/▲18.8 12.00/▲18.9
北信越 24.53/▲22.4 20.01/▲23.5 1.70/▲14.1 2.57/▲16.7
東海 42.51/▲22.4 26.06/▲24.1 5.07/▲18.0 10.67/▲19.2
近畿 33.15/▲21.5 23.05/▲22.2 3.23/▲22.2 6.25/▲17.6
中国 16.40/▲21.3 11.76/▲22.0 1.26/▲17.6 3.21/▲16.3
四国 9.92/▲22.8 8.01/▲22.2 0.60/▲27.6 1.13/▲23.5
九州 31.72/▲18.8 23.34/▲18.3 1.72/▲16.1 3.85/▲12.7
全持家の減少率は九州の▲18.8%から四国の▲22.8%まで、
エリアによって大きな差はなく、概ね2割の減少となりました。
ただ、九州エリアはいずれの工法においても、
全国平均よりも減少幅を小さく抑えていることは注目に値します。
また九州は、リーマンショック以降2010年度10.0%増→
11年度1.4%増→12年度4.1%増→13年度13.5%増と、
毎年全国平均以上に持家着工を伸ばしてきたことを勘案すると、
かなり健闘していると言ってよいでしょう。
工法別では、多くのエリアで在来木造の減少幅が
大きくなっていることが気になります。
駆け込みの収束後、大手メーカーは基本性能を強化した
新構法を導入し、「一般的な木造住宅と比較して」などという
アピールも行っています。
総合展示場や大手メーカーのホームページなど、
家づくりの初期段階でこのような性能PRを目にしたお客様は、
少なからずその影響を受けているのかもしれません。
例外は四国エリアで、2×4やプレハブよりも小さい減少率で
在来木造が踏みとどまり、シェアを伸ばしました。
東北も在来木造が健闘しているエリアと言えるでしょう。
以上、持家全体が相当ダメージを受けた中で、
踏ん張りが見られた点に目を向けてみましたが、
いずれにせよ厳しい状況には変わりありません。
消費税10%への駆け込みが発生した後は、
年間20万戸台が常態化していくことになるでしょう。
「厳しいのはどこも同じ」とあきらめるのではなく、
新たな販売手法でシェアを広げる、
あるいは周辺事業に目を向けるといった、
「今までやってこなかったこと」への挑戦も必要です。
(情報提供:住宅産業研究所)