14年度住宅商品から読み解く15年度のトレンド予測(後編)商品・トレンド,集客・マーケティング,市場動向,ハウスメーカー
前回のMBAメルマガでは、消費増税に伴う駆け込みの反動減で集客・受注共に苦しい年となった2014年。そのような市場で加速するZEHへの動きと、検討レベルになってきたV2Hに関してお伝えしました。
今回は新たな切り口の商品から、2015年の商品トレンドについて考えていきたいと思います。
■ 新たなマーケットを開拓する平屋&中高層
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住宅着工は2008年のリーマンショックで落ち込んで以降、
消費税8%増税の駆け込みが生じた2013年秋まで着工は
増加で推移していました。
しかし長期的に見れば着工はやはり減少傾向で、
着工のピークだった1996年の163万戸からはおおよそ半減。
今後はボリューム層となる30代自体の人口減少や所得の悪化により、
更なる市場の縮小が見込まれています。
とはいえ縮小市場の中でも、成長している分野もあります。
建築物着工統計の居住専用住宅の着工棟数を階層別で見ていくと、
一戸建のボリューム層である2階建のシェアは減少している一方で、
平屋や4〜5階建のシェアは明確に上昇しています。
平屋は地方での建築、4〜5階建は都市部での建築と、
エリアに明確な差はありますが、どちらも今成長している
住宅分野として注目すべきポイントです。
2014年に発売された平屋商品としては、
住友林業の「グランドライフステージ」があります。
「将来の増改築を前提にする」という珍しいコンセプトを
持った商品で、平屋を建てる際にあらかじめ柱や梁などの構造を
2階建に耐えられるように作っておきます。
そして、例えば将来子どもと同居するといったケースでは、
2階建の増築が安価で可能になるというものです。
平屋というと高齢者向けのイメージが強いですが、
・延床面積が小さく、建築費用が安い
・階段や廊下が減る(なくなる)ことで、スペースが有効活用できる
・屋根面積が大きいため、太陽光発電の大容量搭載が可能
以上のような点から、最近は若年層にも支持されるように
なってきています。
同商品のように将来の増築が容易ならば、子どもが増えたり、
両親を呼び寄せたいといった若年層ならではのライフステージにも
対応しやすくなります。
地価の安い郊外や地方でなければ建築は難しいですが、例えば
宮崎や鹿児島における平屋率は県平均で40〜50%に達するほどです。
空き家に関する法律も整備されてきており、中古住宅や
空き家処分による土地の流通が活発になる見込みです。
安価な中古住宅と戦う商品として、空き家処分によって生まれた
郊外用地の活用手段として、平屋がトレンドとなる可能性は
高そうです。
4〜5階建については、平屋とは逆に地価の高い都市部、
特に首都圏において流行が予想されます。
パナホームは2011年に4〜5階建のビューノを発売し、
その好調を受けて2014年4月に7階建対応のビューノ・セブンを
発売しました。
他の住宅メーカーについても、中高層住宅における商品開発や
工業化認定、事業部や人員の整備といった動きが
顕著に見られるようになりました。
一見敷居が高い中高層事業ですが、住宅メーカーにおいても
現状中高層は在来鉄骨やRCなどが多く、設計事務所やゼネコンへの
外注が多くを占めています。
住宅メーカーと中小工務店の技術力に大きな違いがないという点では、
どの会社にもビジネスチャンスが眠っている分野だと言えます。
■ ユーザーは二極化、コスパ商品と邸宅設計
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若年層を中心に非正規雇用者が年々増加している一方で、
2015年に向けたベースアップでは主要な企業において前年実績を
上回る傾向となるなど、所得における二極化は
徐々に進行しつつあります。
住宅商品においても、仕様・部材を限定することで安価ながら
高い性能を持つコストパフォーマンス商品が登場しています。
三井ホームは2014年10月に規格住宅「バーリオ」の販売を終了し、
新たに「セレクトオーダー200」を発売しました。
全200のベースプランから好みの間取りを選択し、間仕切り壁や
外観などをオーダーしていくセミオーダー住宅で、価格を抑えながら
仕様の良さと選択の余地を残していることがポイントです。
また、ミサワホームはセカンドブランドで展開する
安価な木造軸組商品「MJ-Wood」を、「アルビオコート」という
分譲ブランドとして本格展開しています。
一方で高所得層を狙った邸宅設計商品も多く登場しています。
旭化成ホームズ「グランディスタ」、
ミサワホーム「インテグリティ」、
住友林業の「BFグランスクエア」といったものです。
高所得層向けということで設計自由度が高く、仕様の決まった
商品というよりもコンセプトモデル的な位置付けとなります。
2014年度については各社とも戸建住宅の受注棟数は減少傾向にあり、
そうした中で売上・利益を確保するという目的から、
このような単価の高い邸宅商品が相次いで発売されています。
2015年は大手企業においてベースアップが見込まれるため、
これら高所得層を捕捉するための商品・提案が更に増えていくことが
見込まれます。
(情報提供:住宅産業研究所)