マイナス続く、2014年度住宅着工動向(後編)【2014年12月15日】
2014.12.15
○●○●○●○ 工務店MBA 最新業界ニュース ●○●○●○● 「マイナス続く、2014年度住宅着工動向」(後編) ■ 低層貸家は微増維持、近畿は2割近くアップ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 前回は、2014年度上半期の着工動向の概要と、 過去50年間の最低水準を推移している持家の 着工状況について、いくつかのポイントを解説しました。 今回は貸家系住宅と分譲系住宅について、 概要を見ていくことにします。 まずは、貸家系住宅について、 地域別の着工状況を見てみましょう。 ◇2014年度上期 地域別貸家着工数及び前年比増減率(単位:千戸/%) 低層貸家(アパート) 中高層賃貸 全国 114.61/+ 2.5 65.58/▲ 3.5 北海道 4.62/+ 9.0 5.05/▲12.8 東北 9.89/+ 5.3 3.14/+ 1.4 北関東 7.22/+ 5.1 0.65/+20.7 首都圏 41.24/▲ 0.8 20.78/▲ 4.3 北信越 5.90/+ 4.2 0.76/▲ 7.4 東海 11.49/▲ 5.8 4.89/▲13.5 近畿 15.41/+17.1 13.42/+14.7 中国 6.10/▲ 0.2 1.49/▲22.2 四国 2.83/▲ 6.8 0.58/+ 3.2 九州 9.90/+ 3.5 15.08/▲ 8.1 前回ご紹介した通り、持家着工では全地域において 概ね▲20%前後の増減率を示していましたが、 賃貸系では低層・中高層賃貸ともに、 地域によってばらつきが見られます。 近畿エリアでは、低層・中高層の両方で 大きな伸びが見られました。 特に低層は2割近い伸びを示しています。 直近3年間の近畿エリアの低層貸家着工数(上半期のみ)は、 12年度11.95千戸(前年比8.2%増)→13年度13.16千戸 (同10.2%増)→14年度15.41千戸(同17.1%増)と 3年連続で増加し、伸び幅も拡大しています。 3年前の2011年度上期と比較すると、 39.6%と4割近く増加していることになります。 大型のビジネスビルや複合商業施設の開設、 またユニバーサルスタジオの新アトラクションなど、 景気の良い話題が多く、都市の価値向上とともに 賃貸住宅への投資が戻ってきているのかもしれません。 低層貸家の着工数が3000戸(半期)を超える 11都道府県の中では、宮城(前年比30.8%増)、 兵庫(同25.3%増)が突出した伸びとなっています。 宮城では引き続き復興需要があり、兵庫では 阪神大震災後に急ピッチで建てられた貸家が築20年を迎え、 価値向上を期した建替えが始まっていることも考えられます。 一方首都圏の低層貸家は、東京(6.0%増)以外は 全県で前年割れとなりました。 埼玉(▲1.4%)、千葉(▲0.7%)は微減にとどめたものの、 着工数で東京(17.4千戸)に次ぐ全国2位の神奈川(8.1千戸)は、 前年比▲12.4%の2桁減。 これは着工3000戸以上の都道府県の中で 最も大きな減少幅で、持家(▲30.9%)に続きアパートでも、 神奈川市場の停滞が目立ちました。 ■ 北日本では建売着工が増加 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 分譲系住宅のエリア別着工動向は以下の通りです。 ◇2014年度上期 地域別分譲住宅着工数及び前年比増減率(単位:千戸/%) 低層分譲(建売) 中高層マンション 全国 65.04/▲ 6.0 52.53/▲21.4 北海道 0.98/+ 1.3 0.82/▲26.6 東北 2.67/+10.6 1.21/+63.3 北関東 3.20/+ 4.0 0.79/▲20.8 首都圏 30.41/▲ 6.6 26.76/▲26.2 北信越 1.45/▲ 1.7 0.60/± 0.0 東海 8.22/▲ 5.4 3.94/▲ 0.9 近畿 11.73/▲14.5 11.79/▲10.3 中国 2.07/+13.9 1.66/▲39.2 四国 0.59/▲19.2 0.52/▲39.3 九州 3.72/▲ 0.3 4.45/▲31.1 賃貸系と同様に、こちらも地域によって増減率に差が出ました。 唯一、低層・中高層ともに伸びているのが東北エリアです。 特にマンションは前年比63.3%と大幅増。 東北6県のうち、上半期にマンションの着工があったのは 岩手・宮城・福島の被災3県のみ。つまり、この3県のみで 北関東3県(0.79千戸)を上回るマンション着工(1.21千戸)を 達成したということです。 低層分譲でも2桁増と、引き続き復興需要があることが 察せられますが、直近3年間の上半期着工推移で見ると、 12年度(前年比33.3%増)→13年度(22.8%増) →14年度(10.6%増)と伸び幅は縮小してきています。 宮城は1469戸で前年比7.2%増、福島は448戸で 同45.0%増と大きく伸びていますが、岩手は▲6.4%と 減少に転じ、供給に一服感も出てきました。 低層・中高層ともに市場の50%前後を占める首都圏では、 全国平均以上に戸数を減少させています。 もちろん反動減ということもありますが、 中長期的な視点からすると、東京近郊の若年層が、 新築か中古かということよりも居住する街の ブランド価値を重視するようになっていることも、 分譲住宅の着工減につながっていると思われます。 首都圏4都県のうち、千葉では低層分譲が4.1%増、 マンションが前年とほぼ同数で減少を免れましたが、 埼玉・東京・神奈川は低層・中高層ともに減少しました。 とりわけ神奈川は、低層分譲▲18.3%、マンションは▲57.9%で 前年の半分以下の戸数となっています。 神奈川の持家、賃貸、分譲を合わせた総着工数の前年比は▲26.7%。 三隣亡(前回メールマガジン参照)という特殊事情のある 山形(▲26.9%)に次ぐ、全国ワースト2位の減少率を記録しました。 半期で1000戸以上の低層分譲の着工があった15都府県のうち、 増加率1位は岐阜県の27.3%増。 大垣や各務ヶ原で、大手メーカーが共同で手掛ける 200〜300区画規模の分譲地が販売されていることが主な要因です。 マンション(半期着工500戸以上の14都道府県)では、 前述のアパートと同様に宮城(52.7%増)と 兵庫(27.9%増)で突出した伸びが見られました。 震災を経験した地方都市の勢いが、 全国に波及していくことを期待したいところです。 (情報提供:住宅産業研究所)