マイナス続く、2014年度住宅着工動向(前編)【2014年12月8日】
2014.12.8
○●○●○●○ 工務店MBA 最新業界ニュース ●○●○●○● 「マイナス続く、2014年度住宅着工動向」(前編) ■ 増税駆け込み反動減で前年割れ続く ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 消費増税による駆け込み需要に沸いた昨年度(2013年度)は、 前年比10%増の98.7万戸と100万戸近い住宅が着工されました。 しかし、その反動減は3月(前年比▲2.9%)から始まり、 2014年度に突入した4月以降も ▲3.3%→▲15.0%→▲9.5%→▲14.1%→▲12.5%→▲14.3% と連続のマイナス。 9月末時点での累計着工数は44.1万戸、 前年比▲11.6%で折り返しを迎えました。 来年3月の年度末まで1割減のペースが続けば、 2014年度の着工は88万戸前後、一昨年の2012年度 (89.3万戸)をやや下回る規模が目安となります。 まずは、今年度上半期の住宅着工を利用関係別に見てみましょう。 ◇2014年度上期(4〜9月)住宅着工戸数内訳及び前年比増減率 持家 14万3342戸(▲21.6%) 低層分譲(建売住宅) 6万5040戸(▲ 6.0%) 中高層分譲(マンション) 5万2529戸(▲21.4%) 低層貸家(アパート) 11万4610戸(+ 2.5%) 中高層貸家 6万5846戸(▲ 3.5%) ※国土交通省 住宅着工統計より(貸家には社宅等の給与住宅を含む) やはり、増税の影響が最も大きい持家の減少率が大きく、 14.3万戸で前年比21.6%減。 年間ベースに換算(2013年度35.3万戸から 21.6%減)すると27.7万戸。 これが現実のものとなれば、リーマンショックなどによって 着工が大きく落ち込んだ2009年度(28.7万戸)並みの 低水準ということになります。 それ以前に持家着工が30万戸を割ったのは、52年前の 1962年ですから、新築注文住宅をメインとしている 企業にとってはショックを禁じ得ない数値と言えます。 低層分譲(建売住宅)は地価動向や需要を見ながらの 供給調整ということもあり、▲6.0%。 マンションは▲21.4%と持家並みの落ち込みとなりました。 直近3年間は年間12万戸前後と、2009年度(6.7万戸)の 落ち込みから回復していましたが、今年度の通期換算は9.6万戸と、 10万戸を割る可能性が高くなっています。 貸家系は低層が2.5%増、中高層が▲3.5%と健闘。 相続税対策層が少なからず動いているようです。 従来の単身者向け、ファミリー向け賃貸のほか、 比較的年齢層の高い単身女性やシングルマザー向け、 シェアハウス、サービス付き高齢者向け住宅等々、 選択肢が豊富になってきたことも、 市場活性化の要因と言えるでしょう。 また、高スペックな新しい賃貸住宅が増えることで、 競争力が低下した古い貸家の建て替えが進むという 好循環が生まれていることも考えられます。 低層と中高層を合わせた貸家系住宅18.04万戸(前年比0.2%増)を、 一般の貸家と給与住宅(社宅や官舎等)に分類すると、 一般の貸家が17.68万戸(前年比▲0.3%)、 給与住宅が0.36万戸(前年比38.3%増)となります。 戸数としては少ないながらも、給与住宅が大幅に伸びたことで、 貸家全体として微増していることがわかります。 アベノミクス以降、求人倍率の向上や賃金アップが 話題になっていますが、こうしたところでも 雇用環境の整備が進んでいるようです。 ■ 持家着工は過去50年で最低レベルに ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 次に、持家について地域別に着工動向を見てみましょう。 ◇2014年度上期 地域別持家着工数及び前年比増減率(単位:千戸/%) 全持家 在来木造 2×4 プレハブ 地域 戸数/増減率 戸数/増減率 戸数/増減率 戸数/増減率 全国 143.34/▲21.6 100.00/▲22.0 16.15/▲19.1 23.66/▲20.8 北海道 6.28/▲23.0 4.05/▲24.7 1.66/▲21.7 0.52/▲11.8 東北 15.25/▲19.3 11.87/▲19.6 1.78/▲11.6 1.51/▲23.8 北関東 11.05/▲21.2 8.07/▲21.5 1.27/▲18.2 1.62/▲21.1 首都圏 29.85/▲22.6 18.78/▲22.4 4.43/▲21.4 5.96/▲22.9 北信越 13.51/▲22.8 11.12/▲23.8 0.89/▲13.7 1.35/▲18.5 東海 21.45/▲23.3 13.07/▲24.2 2.62/▲17.9 5.36/▲23.2 近畿 16.70/▲21.6 11.55/▲22.0 1.64/▲24.3 3.18/▲17.4 中国 8.21/▲21.2 5.87/▲21.3 0.62/▲17.4 1.61/▲19.4 四国 4.98/▲22.5 3.99/▲21.9 0.32/▲23.8 0.56/▲26.4 九州 16.06/▲18.4 11.64/▲18.6 0.91/▲14.0 1.99/▲12.7 持家の着工は、エリア別に見ても工法別に見ても、 2割前後の減少となりました。 最大市場である首都圏では、すべての工法において 全国平均以上の落ち込みが見られます。 比較的落ち込みの少ない九州でも、2桁減は免れませんでした。 県別では、▲2.4%(長崎)から▲37.0%(山形)まで、 全都道府県でマイナス。 その他の45都道府県を減少幅の少ない順で見ると、 ▲10〜14%台が5県、▲15〜19%台が12県、 ▲20〜24%台が19県、▲25〜29%台が8県、 残りの1県(神奈川)が▲30.9%となります。 長崎は、前年の上半期にほとんどの県が2桁増となった中で、 伸率最低の2.0%、通期でも8.1%と駆け込み需要の波が 小さかったことで、反動減も小幅に抑えられたと言えます。 山形は寅年・午年・亥年には建築関係の物事を 忌避する「三隣亡」の風習があり、 反動減と相まって大幅な減少となったようです。 4月から9月までの持家着工の月次増減率は、 ▲16.1%→▲22.9%→▲19.0%→▲25.3%→▲22.7%→▲23.4%と、 ほぼ右肩下がりとなっています。 昨年は9月末までの駆け込み契約で、 10月以降の3ヶ月間の持家着工が 17.6%増→22.6%増→19.1%増と跳ね上がりました。 つまり今年の10月以降には、9月までのペースを 上回る着工減が待ち受けているということになります。 実際、11月末に発表された今年10月の持家着工は 前年比▲28.6%と、一気に落ち込みました。 当然、累計着工数の減少率も、 9月時点の▲21.6%から▲22.7%へと拡大しています。 受注ベースでは反動減からの脱却も見え始めており、 年度末には着工の減少幅も縮小に向かうと思われます。 しかし期待していた消費再増税による駆け込み需要は 皮算用に終わってしまいました。 当面は厳しい状況が続き、新築注文への 依存度の高い住宅会社にとっては、 生き残りをかけた正念場となりそうです。 (情報提供:住宅産業研究所)