東日本大震災から3年半 災害大国日本の住宅(後編)【2014年10月20日】
2014.10.20
○●○●○●○ 工務店MBA 最新業界ニュース ●○●○●○● 「東日本大震災から3年半 災害大国日本の住宅」(後編) ■ 東松島市で「1日500円の注文住宅」発売 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 東日本大震災から半年が経過し、自宅を再建しようと する人による住宅建設も進んでいます。 しかし、資金不足などから再建を 諦めてしまう人も後を絶ちません。 そうした現状に配慮し、宮城県内の設計事務所や工務店等で つくった地域型復興住宅推進協議会は、延床面積35坪で、 税込1650万円の標準価格に抑えた住宅を商品化しました。 標準価格には、食洗機付きIHキッチンや エコキュートといった設備のほか、カーテン代や照明代、 設計代も含まれています。 低コスト化を実現させた要因の一つが 「蔵工法」と名付けた新工法です。 日本古来の土蔵を参考に、通常1メートル間隔の柱を 50センチ間隔にすることで筋交いが不要となり、 作業の短縮化を図りました。 工期は一般在来工法の半分以下の2カ月半となり、 人件費をカットすることができました。 また、設備や建材の共同購入、良心的な工賃設定など、 各社間の協力も低コスト化の要因となっています。 新商品は総2階建が基本となり、対象エリアは仙台、塩釜、 石巻などの沿岸部を中心に被災地に普及させていく計画です。 宮城県東松島市の花坂ハウス工業では、震災復興住宅として 「ワンデイワンコインハウス」の販売を開始しています。 花坂ハウス工業では、これまで本体価格1000万円の 半規格住宅である「パズルハウス」の販売を行ってきましたが、 新商品である「ワンデイワンコインハウス」は、 本体価格600万円とさらに低価格な商品となっています。 商品名は、1日500円玉1枚(35年間)=640万円で 建てられる家づくりということから由来しています。 平屋建と2階建の2つのプランに限定し、 コストカットを図っています。 延床面積61平方メートルの2階建プランは、 1階に水まわりとLDK、2階に個室を配置しています。 平屋建プランも延床面積46平方メートルに抑え、 コンパクトな間取りとしました。 また、社内に大工15人等の職人を抱え、外装工事を 削減したこともコストカットに寄与しています。 実際の費用は消費税や付帯工事費もあり、 計算通りにいかないケースもありますが、自治体からの 支援金などを活用できれば補填可能ということです。 ■ 広島・土砂災害から学ぶ 危険示す地名の由来 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 災害大国と言われる我が国では、 大地震以外にも様々な災害が頻発します。 最近では、御嶽山の噴火で現在までに50人以上が 亡くなっており、今年8月に広島県で起きた大規模 土砂災害では、70人以上の死亡者が出る大災害となりました。 広島土砂災害での被害が大きかった安佐南区八木地区は、 高度経済成長期にマイホームを求める人のために 開発された新興住宅地でした。 街が開発され、地名も現在の八木地区となりましたが、 もともとは「八木蛇落地悪谷(やぎじゃらくじあしだに)」 と呼ばれていたということです。 土砂流出の可能性が高い土地には、「蛇」の字を あてることが多く、蛇が降るほどの水害が多い、 悪い谷という意味になります。 この地名が宅地開発に伴い、やがて 「八木上楽地芦屋(やぎじょうらくじあしや)」と 耳触りの良いものに改められ、現在は八木だけが残りました。 また東日本大震災の被災地でもある岩手県の釜石や 宮城県の塩釜など、「カマ」が着く地名は、 津波によって湾曲型に浸食された地形を意味しています。 このように由緒ある地名には地域の特性を見てとることができ、 家づくりや防災対策に役立てることができます。 ■ 新耐震住宅でも安心できない 木造住宅約8割に倒壊の恐れ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1981年に新しい耐震基準が導入され、耐震性能が それまでと比べ、飛躍的に向上しました。 しかし阪神・淡路大震災後の2000年に建築基準法が改正され、 さらに耐震基準が強化されたことで、建築当時は新耐震基準を 満たしていた住宅でも、現在の耐震基準で診断すると 「倒壊の可能性が高い」とされる木造住宅が少なくありません。 震度6強〜7程度の大地震でも倒壊しないと言われている 新耐震基準の建物でも安心できないという調査結果を 日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)が発表しました。 この調査によると、建築基準法が再改正される 2000年5月以前に建てられた新耐震基準の木造住宅の 約8割に十分な耐震性能がなかったということです。 調査は木耐協が2006〜2013年に耐震診断した 全国1万8870戸を分析したものです。 これによると、震度6強で「倒壊の可能性が高い」が61%、 「倒壊する可能性がある」が23%となっており、 合わせて83%の建物が倒壊の可能性があると診断されました。 国は1981年の新耐震基準適用以降に建てられた住宅は 安全基準を満たしているとして、耐震化補助の対象外としています。 しかし今後発生が懸念されている南海トラフ大地震や 首都直下型大地震が起きた際には、新耐震基準の建物でも 地震の揺れに耐えられない可能性があり、改修工事や 耐震化リフォームなどの対策が求められます。 日本に住んでいる以上、自然災害から逃れることは 困難と言えますが、住民の命を守るために住宅会社に できることは大きいと言えるでしょう。 (情報提供:住宅産業研究所)