住宅土地統計調査から読み解く、住宅市場の今(後編)【2014年9月8日】
2014.9.8
○●○●○●○ 工務店MBA 最新業界ニュース ●○●○●○● 「住宅土地統計調査から読み解く、住宅市場の今」(後編) ■ 住宅設備は太陽光発電&加齢対応の採用率が増加 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 住宅土地統計調査では、住宅における設備の 採用状況を調査する項目もあります。 省エネルギー設備に関する設備の導入については、 1)太陽光発電システム 2)太陽熱温水器 3)二重サッシ又は複層ガラス の3項目を導入している住戸を調べています。 持家一戸建住宅2,630万戸における導入状況としては、 太陽光発電システムが143万戸で導入されており、 前回調査となる2008年からは95万戸増と3倍近い伸び。 シェアで見ても太陽光発電の採用率は 1.9%から5.4%と3.5ポイントの大幅増となりました。 この5年間で急速に導入が進んだ要因としては、 2010年度に電力の買取り価格が設定されたことにあります。 10年度は1kWあたり48円でスタートして、 11年度には42円に引き下げられました。 以降も1年ごとに引き下げが続き、 14年度は10kW未満で37円、10kW以上で32円が 1kW当りの買取り価格となっています。 設置により将来的には儲けが出ることを ウリにしていた太陽光発電ですが、 今後も買取り価格は年々引き下げられる見込みで、 そろそろ「太陽光=儲ける」という 切り口の訴えは難しくなってきています。 今後の太陽光は「儲ける」から、 「光熱費の削減」が提案のベースになっていきます。 予想以上に太陽光発電が普及したことで 電力会社の買取り負担が増したこと、また、 東日本大震災以降各地の原発が停止していることにより、 今後も電気料金の上昇が予測されています。 「売電価格が下がり電気料金は上がる」という 状況下では、発電した電力をそのまま売るのではなく、 蓄電して自ら使うという「エネルギーの自給自足」に ニーズが移っていくことは間違いありません。 現状まだまだ住宅用蓄電池は高額ですが、 イニシャルコストは技術の進歩と共に 引き下げられていきますし、また電気料金の 値上げによって相対的に価値を増していきます。 発電した電力を「売る」から「使う」発想が、 今後の太陽光発電の提案においては重要になっていくでしょう。 二重サッシ又は複層ガラスの窓については、 そのいずれかを「全ての窓に採用している」という住戸が 約459万戸と前回調査から107万戸の増加。 シェアでも14.0%から17.5%となっています。 また「一部の窓に採用している」住戸も 前回から96万戸増の483万戸、シェアは15.3→18.4%となり、 これらを合計すると二重サッシや複層ガラスの窓を 採用している持家一戸建の住宅は35.9%となります。 これらは持家一戸建住宅の全ストックを 対象とした数字のため、直近での採用率は より高くなっているということです。 住宅の省エネ性能への関心は 年ごとに高まっていると言えます。 高齢者向けの設備の設置状況としては、 一戸建住宅2,860万戸に対して 「高齢者等のための設備」があると回答した住戸は 1,775万戸と全体の62.1%となりました。 特に2011年以降に建築された住戸においては、 その比率は85.2%まで高まっています。 高齢者等のための設備とは、 「手すり」 「またぎやすい高さの浴槽」 「廊下等が車いすで通行可能な幅」 「段差のない屋内」 「道路から玄関まで車いすで通行可能」 といった項目を指します。 このうち5年前の前回調査からの増加が顕著なのは、 「手すりがある住戸」55.1→79.6% 「段差のない屋内」22.1→55.2% 「またぎやすい高さの浴槽」25.9→44.8% といったもの。 浴槽については住設機器メーカーの商品が、より バリアフリーを意識するようになったことが要因ですが、 手すりや段差など高齢者が暮らしやすいよう家づくり で配慮していくというケースは確実に増えてきています。 ■ 旧耐震基準物件は築30年を経過、建替え需要は? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回の住宅土地統計調査によれば、 持家住宅は全国で3,223万戸ありますが、 そのうち新耐震基準に該当する1981年以降に 建築された住戸は2,098万戸に上ります。 建築時期不明分を除くと 1980年以前に建築された住戸が1,030万戸あり、 未だ全持家住宅の3割以上を旧耐震基準の住戸が 占めているということになります。 特にこのうち1971〜1980年の10年間に建てられた物件は 582万戸と非常に多く、木造住宅の寿命はおおよそ30年と 言われていることから考えても、多くが建替えや 大規模リフォームの適齢期を迎えています。 実際、住宅土地統計調査によれば、 この時期に建てられた住戸で耐震診断を 実施した物件は32.6万戸ありますが、 そのうち耐震性が確保されていなかった住戸は 16.4万戸と半数以上が必要な耐震性を 備えていない結果となっています。 つまり、1971〜80年の間に建てられた住戸は 耐震性という点だけ見ても、300万戸近い建替えや 耐震リフォームの需要があるということです。 新耐震基準になったからといって 住宅の寿命が著しく延びるとは限りませんが、 性能担保という点では築30年は一つの目安になります。 バリアフリーや省エネなど関心の高い提案を含め、 確実に建替え・リフォームの受注に結び付けることが 今後重要になっていきます。 (情報提供:住宅産業研究所)