住宅土地統計調査から読み解く、住宅市場の今(前編)【2014年9月1日】
2014.9.1
○●○●○●○ 工務店MBA 最新業界ニュース ●○●○●○● 「住宅土地統計調査から読み解く、住宅市場の今」(前編) 総務省はこの7月に、「平成25年住宅・土地統計調査」の 速報集計結果を発表しました。 簡単に説明すると、総務省主導で行われる 住宅に関する統計調査で、全国の住宅数や世帯数、 住宅・土地の所有状況、住宅設備の採用状況など、 国内の住生活に関する様々なことを調べるというものです。 調査結果は最小でも都道府県単位と マクロなデータになるため、地域の状況に そのまま当てはめて活用することは難しいです。 しかし、政府の国策や住宅市場の今後の動向を 占うものとなるため、先を見越した企業経営を行うためには 非常に重要な指標となります。 そこで、今回は同調査における重要な指標を取り上げ、 住宅市場の現状と今後について考えてみたいと思います。 ■ 空き家率は全国で13.5%と過去最高に ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回の住宅土地統計調査で、最も大きな ポイントとなったのは空き家率の増加です。 空き家率とは、全ての住戸のうち居住者がいない 住戸の比率を表したもので、今回の調査では 全国約820万戸が空き家との調査結果が発表されました。 比率にすると空き家がおよそ13.5%を占めており、 戸数・比率共に過去最高の数字になっています。 新設住宅着工戸数はこの5年間でおおよそ430万戸です。 一方で総住宅戸数は5年間で5,759万戸から 6,063万戸と304万戸増加しています。 差し引くと5年間で消滅した住宅は126万戸となり、 新しい住宅の着工に対して消滅する住宅が 非常に少ないことがわかります。 では、なぜ古い住戸が残り続けているのでしょうか。 その大きな要因となるのは、 空き家の固定資産税が低いことです。 空き家を取り壊すことで固定資産税は 空き家時の約4倍を支払うことになります。 廃墟同様になった空き家が、景観や防災、治安面からも 良しとされないにも関わらず残り続けているのは、 この税負担が大きな要因となっています。 ■ 空き家を救う国策の動き ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 行政側の空き家対策としては、秋の臨時国会で 自民党の空き家対策推進議員連盟が提出すると見られる 「空き家対策推進特別措置法案」があります。 老朽化で倒壊する危険があったり、 景観や衛生を損なうと判断する空き家に対して、 市町村が家主に除却や修繕、立ち木の伐採などを指導したり、 勧告・命令したりできるようにするというものです。 また空き家の固定資産税の優遇見直しという 抜本的な案も検討されています。 空き家の固定資産税を増加させることにより、 空き家そのままの形での所有を困難にするというもので、 これが適用されれば売却や活用で中古流通や リフォーム市場が一気に動き出す可能性もあります。 また、2015年度には住宅金融支援機構、 「フラット35」の利用範囲を、中古住宅の購入時だけでなく、 中古住宅取得時の改修費用にも充てられようにすることで、 購入費と改修費をフラット35で一括借り入れできるように するとの動きもあります。 更に中古再販を行う事業者に対しても、 不動産取得税を免除する特例措置を盛り込む方針です。 注文住宅に空き家の状況は関係ないと お思いの読者もいらっしゃると思いますが、 中古住宅の再生・再販ビジネスも徐々に マーケットは拡大しており、空き家を活用した提案が 軌道に乗れば、一次取得層が中古市場に 流れていく可能性は充分あります。 また今後地方を中心に人口はますます減少し、 人口の50%以上が65歳以上の高齢者になり生活の維持が 困難となる「限界集落」も増えていくと予測されています。 空き家をなくし地域を活性化させることで、 その地域を住みやすくし長く暮らしていける 環境を作ることも、今後の住宅業界にとって 非常に重要なポイントとなります。 (情報提供:住宅産業研究所)