ビルダーのメインターゲット、地方若年層攻略法(前編)【2014年8月18日】
2014.8.18
○●○●○●○ 工務店MBA 最新業界ニュース ●○●○●○● 「ビルダーのメインターゲット、地方若年層攻略法」(前編) 住宅会社の中でも、広域展開型のハウスメーカーや 大型ビルダーの経営戦略においては、 エリア戦略も重要な要素の一つです。 全国展開も視野に入れてエリア拡大を図る 大型ビルダーでは、市場性の近い隣県から 少しずつエリアを広げて行くのが定石です。 また、東日本震災以降は、 復興需要があり市場規模の大きい宮城へ 新たに進出するケースも多く見られました。 ハウスメーカーの最近のエリア戦略の傾向を見ると、 選択と集中に向かっています。 採算効率の悪いローカル市場では拠点の 統廃合などを進め、都市圏に一層注力しています。 相続税対策や資産活用としての二世帯住宅や 併用住宅の提案は都市圏のほうが需要が多いでしょう。 都市部の狭小地を有効活用できる中高層住宅は 一つのトレンドとなっています。 パナホームでは最大7階建てまで建てられる 重量鉄骨の都市型住宅「ビューノ」を発売し、 同商品を訴求する拠点「ビューノプラザ」を 首都圏で順次オープンしています。 積水ハウスの「ベレオプラス」も 併用住宅を想定した高層住宅。 三井ホームでは木造の高層住宅に取り組んでいます。 また、メーカー各社ではアパートの販売も好調で、 力を入れている分野の一つですが、 どちらかというと、地方よりも都市部の資産家を ターゲットとした事業展開をしています。 ■ 地元志向の「さとり世代」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 一方、地域密着型ビルダーのメイン市場は 地方のローカル圏であり、主なターゲットとなるのは 20〜30代の土地無し一次取得客ではないでしょうか。 最近では、若者が都会に憧れず地方に留まり、 その地方に住む若者が元気だという話を聞きます。 インターネットの普及によって、都市部と地方の 情報のスピードの差は縮まっていますし、 自宅に居ながらインターネットで買い物もできます。 地方都市ではイオンモールに代表されるような 大型ショッピングセンターの開業も加速し、 都市部と地方の便利さの格差は ほぼなくなったのかもしれません。 「さとり世代」とも称される現在の20代は、 物心ついたころには既にバブルが崩壊しており、 不況しか知らない世代です。 現状を冷静に見て将来が今よりも良くなることは ないと悟り、身の丈に合わない努力や衝突は避け、 上昇志向に欠けていると言われます。 地方から上京して出世や成功を目指すよりも、 地元で現状を維持しながら、家族や仲間との 生活を大事にする、そんなライフスタイルが 性に合っているのでしょう。 リクルート進学総研の調査によると、 2013年の大学進学者の48.7%は地元大学への進学を 希望し、09年の調査結果と比べると、地元志向の 割合は9.7ポイント増えています。 卒業後も地元での就職を望む若者は多く、 地方公務員の人気が高まっています。 ■ 地方若年層の新たな消費者像「マイルドヤンキー」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 若年層をターゲットとするのであれば、 都市部よりも地方のほうが需要が生まれやすい ということはあるかもしれません。 地方の若年層の消費者像として、 最近新たに注目されているのが「マイルドヤンキー」です。 「マイルドヤンキー」は以下のような特徴が上げられます。 ・上京に憧れず、地元から離れない ・家族や仲間を大事にする ・小中学校の同級生との関係を継続 ・節約志向だが家族のイベントでは出費 ・車、酒、タバコなどの従来型消費を続ける 「マイルドヤンキー」も大きく括れば 「さとり世代」に入ります。 「さとり世代」は「車離れ」に代表されるように、 とにかく金を使わないイメージがありますが、 マイルドヤンキーは節約志向ではあるものの、 消費行動には積極的であり、車、酒、タバコ、 パチンコなどの従来型の消費を続けています。 ある意味では、地方消費のボリューム層とも言えます。 ただし、車の好みはかつてのヤンキーのように スポーツカーや高級車ではなく、手ごろな価格で 大人数が乗れる軽自動車のミニバン型が好まれます。 自動車業界における軽自動車の販売好調は、 「マイルドヤンキー」の需要が多分に 含まれているのではないでしょうか。 地方の一般的な若年夫婦の消費者像としては 意外に多数派かもしれません。 都市部の若年層は住まい方を考えたときに、 賃貸住宅に住み続けることや 中古マンション等も候補に入ります。 一方、地方のマイルドヤンキー層は、 結婚、子どもと住宅の購入をセットにして考えることが多く、 新築戸建の需要はあると見られます。 消費税5%の適用期限が終了した昨年10月以降、 業界全体としては住宅の受注は落ち込み、 今年4月以降もまだ回復していない状況です。 そんな中で、地方のビルダーの中には、今年4月以降も 前年以上の受注で好調だというビルダーもいます。 意外に税制や景気の動向云々に大きく左右されず、 住宅の購入を検討するマイルドヤンキー層の 需要を上手く捉えているのかもしれません。 次回は、地方の若年層に いかに家を売るかの戦略を見てみましょう。 (情報提供:住宅産業研究所)