住宅業界最新テクノロジー(前編)【2014年8月4日】
2014.8.4
○●○●○●○ 工務店MBA 最新業界ニュース ●○●○●○● 「住宅業界最新テクノロジー」(前編) ■ 震災後進む「耐震」から「制震」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 東日本大震災以降、住宅大手各社は、 繰り返し起こる余震に備え、「耐震」から 「制震」への取り組みを強めています。 東日本大震災ではマグニチュード5.0以上の余震が 2カ月間に530回も発生しました。 そのため、大地震に耐えるだけではなく、 繰り返し発生する余震による構造躯体への負担を 抑える意味で、制震装置への関心が高まっています。 三井ホームは、制震構造を備えた耐震壁 「バックス」を新開発しました。 長さ910ミリの枠組み壁と制震デバイスを 組み合わせた構造で、制震デバイスは、 粘弾性ゴムを用いた間柱型形式のダンパーです。 壁の構造性能を維持したまま、 制震性能を向上させるオリジナルの工夫として、 左右の「く」の字フレームを「X」形状に構成しています。 バックスは地震エネルギーの吸収力が高く、 三井ホームのプレミアム・モノコック構法と 組み合わせることで、一般的な枠組壁工法の建築物と比べ、 地上に対する建物の揺れを2階建ての2階床で、 最大80%程度低減することができます。 揺れの減衰を速めることで、何度でもその性能を持続し、 繰り返しの大地震に対しても効果を発揮します。 2階建てと3階建てに対応し、2階建ての場合は バックスが2基、3階建ての場合は4基必要となります。 価格は1基20万円程度で、 まずは東京エリアでの先行販売を行っています。 旭化成ホームズは、新開発のオイルダンパー制震装置 「サイレス」で3階建て住宅の制震標準化を行いました。 サイレスは、鋼製のパネルと、高層ビルなどの 地震対策装置として採用されることが多い オイルダンパーで構成されています。 地震が起こると、ダンパー内に充填されている オイルの圧力によって抵抗が生まれ、 揺れを低減する仕組みとなっています。 大地震から中小地震までに制震効果を発揮し、 マグニチュード7以上の大地震では約15%、 マグニチュード5〜7未満の中地震では約40%と、 度重なる余震による躯体の損傷を軽減する効果が期待できます。 旭化成ホームズでは、すでに2階建ては 制震フレームを採用した「ハイパワード制震ALC構造」 に切り替え済みです。 今回の「サイレス」の導入で、 2階建てから3階建てまでの戸建て住宅において 制震標準化を終えたことになります。 プランによって多少異なるものの、 30坪程度の3階建てではサイレスを1基、 60坪程度で2基設置します。 価格は1基15万円程度で、耐用年数は 同社の建物本体と同等の約60年です。 大和ハウスでは、エネルギー吸収型の新耐力壁 「ディー・ネクスト」を商品化し、戸建て住宅最上位商品の 「ジーヴォ・シグマ」に標準搭載しています。 「ディー・ネクスト」のコア技術として 新たに開発されたのが、地震の揺れに合わせて上下に、 しなやかに動く「シグマ型デバイス」です。 地震のエネルギーをシグマ型デバイスに 集中させることで、柱や梁の損傷を防ぐとともに、 地震の揺れ幅を3分の2に軽減し、建物全体の損傷を 最小限に抑えることができます。 ■ 非常時用電源としても期待の電気自動車 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 大容量二次電池を搭載するプラグインハイブリッド車 (PHV)や電気自動車(EV)は、緊急時の 住宅用電源としても期待されています。 普段は、HEMS等を用いてエネルギーの 使用状況等を管理し、普通の乗用車として利用します。 災害発生時には、PHVやEVに搭載された 二次電池から電力を住宅用に融通するというものです。 住宅のエネルギー源の幅を広げることができるため、 住宅と自動車や、地域と自動車を組み合わせる実証実験が 各地で行われています。 愛知県豊田市で行われているスマートタウンに関する 実証実験の「低炭素社会システムを目指す実証プロジェクト」 では、70戸の住宅をトヨタホームが建築し、全戸に トヨタ自動車の「プリウスPHV」を、5年にわたり 無償貸与しています。 プロジェクトの主な目的は交通の最適化に関する 実証実験ですが、緊急時にはプリウスPHVの二次電池が 住宅用電源として機能するようになっています。 このような実証実験だけでなく、 東日本大震災以降は、実際にPHVやEVを 緊急時用の電源として用いる住宅が増えています。 今回は震災に関連し、実際に使われている 住宅のテクノロジーを紹介しました。 次回は未来の暮らしを感じることができる 最新テクノロジーを紹介します。 (情報提供:住宅産業研究所)