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スマートタウンの今とこれから(後半)【2014年7月28日】

2014.7.28

○●○●○●○ 工務店MBA 最新業界ニュース ●○●○●○●



「スマートタウンの今とこれから」(後編)



前回は、既に人々の暮らしが始まり、コミュニティが
形成されつつあるスマートタウンをご紹介しました。


今回は、最近入居が始まったもの、
また今後の事業について、いくつか見ていくことにします。



■ 国内最大級、パナソニックが挑む大規模開発
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今春、総事業面積19ヘクタール、予定戸数1000戸
(うち戸建600戸)、計画発電量約3メガワットという
国内最大級のスマートタウンの入居が始まりました。


パナソニックが神奈川県藤沢市の工場跡地で手掛ける
「Fujisawa サスティナブル・スマートタウン」です。


各住戸にはパナソニック製の最新スマート設備のほか、
同団地専用のタウンポータルサイトに手軽にアクセス
できるように、スマートテレビやタブレット端末も標準装備。


居住者は、テレビやタブレットを使って、
エネルギーの利用状況はもちろん、
タウンカメラの映像で街の様子を確認したり、
カーシェアの予約、掲示板を介しての交流等々、
家に居ながら様々なサービスを利用できます。


街の中には複合商業施設や地域の防災拠点となる広場、
そして「ウェルネススクエア」などが順次開設されます。


ウェルネススクエアは、特養老人ホーム、
サービス付き高齢者向け住宅、各種クリニック、保育所、
学習塾が一体となった、福祉・健康・教育の複合施設です。


子どもから高齢者まで、あらゆる人が知識や文化、
そして元気をシェアできる空間を目指しています。


電力や情報だけでなく、人間のエネルギーも
シェアしようという街づくりの姿勢が窺われます。


単なる「スマートハウスの集合体」ではなく、
実験レベルでもない、実用に即した街として、
着々と様々な施設やサービスが形成されつつあるようです。


第一期の販売価格は5000〜6500万円程度と、
周辺の相場よりも1〜2割程度高め。


入居者のクチコミでは、「テーマパークに住んでいるよう」、
「街を買ったと思えば納得の価格」、「標準装備の
最新家電が便利」など、肯定的な感想が多く見られます。


戸建でありながら、タウンマネジメントのための
管理費がかかることについても、「街を買った」
という意識が強いためか、さほど抵抗感はないようです。


ただ、各戸のスマート設備が修繕・交換期に
差しかかったときの住民の負担感は
決して小さくはないでしょう。


また、随所に最新設備を搭載した街全体の
大規模修繕が必要になっとき、共用部での売電収入と
現行の管理費で賄うことができるのか、
この辺のやりくりは、先駆者ゆえの苦労があるかもしれません。


近年は業容縮小が目立ったパナソニックですが、
この藤沢市のプロジェクトに代表される住宅関連事業では、
2018年度に2兆円(2012年度比で約1.7倍)の売上と、
壮大な目標を掲げています。


スマートハウス技術については、グループ会社の
パナホームだけでなく、大和ハウスの新型HEMSへの技術提供や、
トヨタ自動車と共同で家電とクルマをクラウドネットワークで
連携させるサービス提供に乗り出すなど、
積極的な動きを見せています。


またスマートタウン事業では、シンガポール、
インド、中国、ロシアなどへの進出も予定。


これは、パナソニックグループが住宅における
省エネ・IT技術に商機を見出した「選択と集中」
の結果とも思われます。


将来的に住宅のインフラとなるであろうスマート技術で
先鞭をつけ、世界のトップ企業としての威信を
取り戻すことができるか、住宅業界にとっても
大きな関心事と言えるでしょう。



■ 内容充実とともに進むブランド化
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

大和ハウスは今年2月、三重県桑名市の
「陽だまりの丘先進的都市型スマート住宅供給事業」
の事業者に選定され、2015年7月の入居開始を目指し、
全64区画のスマートタウン事業に着手しました。


この「SMA×ECO TOWN 陽だまりの丘」の注目ポイントは、
団地の南面斜面に約100kWの太陽光発電所を設置するというもの。


この発電所の売電収益は、タウンマネジメントだけでなく、
各住戸のメンテナンスや外壁リフォーム等にも
活用していくとのことです。これは日本初の取り組みです。


このほか、軽自動車よりもコンパクトな2人乗りの
電動車両を導入して、移動手段としてはもちろん、
停電時の非常用電源として、その将来性を検証するという
実験的な事業も行われる予定です。


大和ハウスでは、この陽だまりの丘や前回ご紹介した
晴美台のほか、3つのスマートタウン事業が進んでいます。


同社では「SMA×ECO Project」と名付けて、
各所で特色ある取り組みを行っています。


その他の住宅メーカーでも、ミサワホームでは
「エムスマートシティ」、積水化学工業では
「スマートハイムシティ」などとブランド名を付けて、
先進的な環境配慮の街づくりに注力しています。



■ 本当の課題は「既存の街」のスマート化
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

これまで見てきたスマートタウン事業は、
遊休地や大規模施設の跡地などで、
ゼロから開発を進めるケースばかりです。


しかし、日本のエネルギー問題を考える上では、
「既存の街をどうやってスマート化していくか」が
最大の課題と言えます。


政府では、1万戸程度の既存住宅密集地を
全国で2〜3ヶ所ピックアップし、対象住戸(2〜3万戸)に
HEMSやスマートメーター等を導入するという、
大規模な実証事業に乗り出しています。


この事業では、電力利用の分析や、
高齢者の見守り、不審者の侵入防止などの
事業モデルについて検証が行われる予定です。


ゼロから作る街のように、何もかもが先進技術
というわけにはいきませんが、「住宅とエネルギーの
ネットワーク化」は徐々に進行しています。


今後、国や大手企業が事業を拡大させて
街が進化していくことで、消費者側からも
スマート設備導入のリフォームや建て替えといった
需要が生まれてくるかもしれません。


それだけでなく、インフラの整備が進んで
地域の居住性が高まれば、他地域からの住み替えによる
新築や中古流通の需要も出やすくなることも考えられます。


つまり、スマートタウン構想は、
長期的に見れば、どの地域の住宅会社にとっても、
他人事ではないということになります。



(情報提供:住宅産業研究所)

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