スマートタウンの今とこれから(前半)【2014年7月21日】
2014.7.21
○●○●○●○ 工務店MBA 最新業界ニュース ●○●○●○● 「スマートタウンの今とこれから」(前編) 大手住宅メーカーやディベロッパー、 また自動車メーカーやIT企業といった異業種、 更には自治体や学術機関などが、いわゆる 「スマートタウン」事業に本格的に 取り組み始めてから数年が経ちました。 以来、全国各地で数多くの事業が立ち上がりましたが、 まだまだ計画段階や実験段階のところもあれば、 既に入居者が暮らし始めているもところもあります。 また、単にスマートハウスが並ぶだけの分譲街区から、 地域内の交通手段や商業施設も含めて エネルギー利用を効率化する街づくりもあり、 それぞれの進捗状況や取り組み規模は様々です。 今回はこのスマートタウンについて、 現在の主だった動向をご紹介します。 ■ 開設3年目、先行スマートタウンの今 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 積水ハウスが2011年7月に起工した 「スマートコモンシティ明石台」。 国内最大の住宅メーカーが手掛ける全国初の スマートタウンであり、東日本大震災直後、 それも宮城県内最大級の住宅団地ということで、 話題を呼びました。 全764区画のうち431区画を同社が所有し、 全戸に太陽光発電を標準装備、 そのうち2割程度を目安に、燃料電池・ 蓄電池・HEMSも普及させていく予定です。 現在はZEH仕様の建売モデルを建築し、 「ゼロを先取るまち」としてアピールしています。 街全体の発電量は約2.5メガワットで、 消費量の1.7倍程度と試算し、団地外への世帯にも 電力を供給する発電所としての活躍が期待されています。 団地内には、大震災の教訓を活かして 「防災コミュニティセンター」を設置し、 非常食や防災用品の備蓄場所兼避難場所としての 機能を持たせました。 また全戸にEV用コンセントも備え、 災害時にガソリン不足で車が動かせない という事態を回避します。 このほか、年に数回行われる「隣人祭り」では、 近隣の交流を促し、いざという時に協力し合える 「防災力」の向上に結び付けています。 2012年4月に街びらきを迎え、2年後の今年3月には 入居数200世帯を突破しました。 同団地のPRサイトでは、 入居者たちの声が紹介されています。 大災害を間近で体験したという人が、 スマートハウスの性能や、コミュニティ形成も 含めた街づくりへの安心感を語るなど、 説得力のある感想が目立ちます。 またスタッフブログでは、 住民が協力して雪かきを行ったり、 イベントを楽しんだりといった模様を頻繁に紹介し、 安心・安全で楽しい街の雰囲気をアピールしています。 ■ 住民自身が効率的なエネルギー運用を考案する街 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 大和ハウスが大阪の堺市で手掛けた 全65区画の「SMA×ECO TOWN 晴美台」は、 国交省の2012年度「第1回住宅・建築物省CO2先導事業」 に採択された事業です。 全戸に太陽光発電、蓄電池、HEMSを導入していますが、 国と堺市からの補助金により、コスト増分がほぼ相殺され、 土地+建物の平均価格は4400万円ほどになりました。 共用施設にも省エネ・創エネ設備を搭載したほか、 風通しに配慮した道路整備など、 街全体でのエネルギー効率化に努めています。 団地内専用のホームページも開設され、 各戸のHEMSからデータを集計して 街全体のエネルギーを見える化するとともに、 コミュニティ形成に役立つ情報も提供しています。 ホームページ内では、住戸毎に 省エネルギー貢献度のランキングも表示し、 貢献度が高い住宅には団地内エコポイントを付与します。 獲得したポイントは、団地内で実施する カーシェアリング利用の際に使用可能です。 また収集した情報は、フィードバックして 今後の運営改善に役立てています。 住民たちは、電気代を減らし、 電力会社への売電量を最大化できるよう、 蓄電池の効率的な活用法を自ら考案し、 情報を共有して実践しています。 適切なタウンマネジメントによって、 エネルギーだけでなく、住民同士のつながりも 形成されているようです。 このようなタウンマネジメントの整備も評価され、 同団地は「2013年都市住宅学会賞・業績賞」を受賞しました。 スマートタウンの成否は、街づくりの計画だけでなく、 入居後の運営がカギを握っていると言えそうです。 (情報提供:住宅産業研究所)