持家市場縮小、土地活用は次の一手となるか(後編)【2014年6月30日】
2014.6.30
○●○●○●○ 工務店MBA 最新業界ニュース ●○●○●○● 「持家市場縮小、土地活用は次の一手となるか」(後編) 前回に引き続き、持家市場縮小局面で 期待がかかる「土地活用」事業について、 その現状と将来性について考えていきます。 前回お話しした一般的な賃貸住宅以外に、 どのような可能性があるでしょうか? ■ 店舗〜大都市は土地情報不足、地方はテナント情報不足 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 都市部では好立地の土地が浮いていることは ほとんどなく、マーケットが小さな地方では、 そもそも出店企業自体が多くありません。 店舗建築による土地活用は、事業が成り立つ立地か、 土地オーナーと事業者とのマッチングを どのように行うかなど、見極めやコネクションが必要なため、 新規参入のハードルが高くなっています。 ハウスメーカーでは近年大和ハウスが大きく 伸びていますが、全国的な土地オーナーの囲い込みと、 コンビニや衣料など大手チェーンストアとの ネットワークありきといった感があります。 ただしその大和ハウスでさえもテナントの3〜4割は 新規開拓と言われ、地主にせよ足繁く通って関係性を築く という地道なスタイルです。 つまり店舗建築においては、ホワイトカラー的な サラリーマンでは通用しない、内側に入り込んだ 人間関係の構築が必要になります。 ショッピングモールなどの大型商業施設や 物流施設は別にして、単独の店舗であれば地場の不動産業者や 商店など地域内における関係性が重要になるため、 ビルダーや工務店にもまだまだ開拓の余地はあると言えます。 ■ 医療・介護〜シニアの影響大きくマーケットは拡大続く ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2020年には国内人口の3割弱が65歳以上の高齢者になる と言われていますが、高齢者が増加するにつれて シニアビジネス市場は総じて拡大傾向にあります。 土地活用においては主に医療・介護系の施設が該当します。 例えば、一般診療所の開設数はここ3年間で 4,632→4,747→4,922件と徐々に増加しています。 介護系の施設についても、ホームヘルパーが居宅を訪れて 介護する訪問介護事業所は、この10年間で倍増の約2.8万件。 通所介護事業所(デイサービス)は3.1万件で、 10年間で3倍強に増えています。 今は団塊世代が自立者としてまだまだ元気ですが、 もう5〜10年もすれば医療・介護が必要になるケースは 爆発的に増えていくと予想されます。 今すぐ取り組むかどうかはともかく、 今後マーケットが拡大していく以上、 土地活用としては抑えておきたい事業の一つです。 現在最も医療・介護ビジネスで住宅に近い分野としては、 生活相談サービスや見守りサービスを備えた賃貸住宅 「サービス付き高齢者向け住宅」(以下サ高住)があります。 サ高住の平均入居率は70%と言われており、 一般的なアパートにおける借上げの家賃保証が 80〜85%という点と比較すると、 かなり入居率が低いというのが現状です。 なぜそんなに平均入居率が低いのかと言えば、 安価で比較的良質なサービスを提供している 特別養護老人ホーム(以下特養)への人気の集中が挙げられます。 サ高住の家賃は物件によって異なりますが、 多くは特養よりも高い設定となります。 有料老人ホームは更にその上の価格帯となるため、 安価な特養の入所希望者は年々増えて13年度末には 待機者が52.4万人と過去最高になりました。 特養は15年度から要介護度に応じた入所条件となる見込みですが、 特養の安価な料金設定を求めている待機者が、上の価格帯である サ高住に流れてくるかというと、不透明なのが現状です。 現状サ高住には二種類の物件があります。 それは自立者向けか、要介護者向けかです。 自立者向けは「交通の便が良い」「部屋が広い」 「周辺に商業施設が多い」など、一般的な賃貸物件と ほぼ同様のニーズとなります。 よって自立者向け物件の経営が成り立つ立地であれば、 サ高住よりも通常のアパートの方が 高い稼働を見込めるケースがほとんどです。 一方で要介護者向けは入居者本人が 外に出歩くことが少ないため、立地や居住性よりも 施設内で提供されるサービスの質が問われます。 立地の重要性が低い分、郊外でも 経営が成り立つことがポイントだと言えます。 現状、サ高住を運営したい医療法人や介護事業者から 建築を請負うというケースがほとんどで、 住宅会社が自社でサ高住を運営するケースは限られています。 今後もこの傾向に大きな変化はないと思われますが、 建築請負だけであっても、介護に配慮した動線の設計など 医療や介護に関する様々な知識が要求されます。 いざ参入しようと思っても、先行する他社に ノウハウで後れを取っていればそれだけ不利になりますので、 将来を見据えた早めの取り組みが必要になりそうです。 (情報提供:住宅産業研究所)