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人口減少時代、住宅業界は「職人不足」が業界課題業界ニュース

業界ニュース
2024.3.5


職方のイメージ向上施策、若者を呼び込む住宅会社


日本の人口は既に減少期に入り、毎年数十万人というペースで減り続けています。
国立社会保障・人口問題研究所では昨年4月、
「50年後には総人口が現在の7割に減少する」という推計結果を発表しました。
この人口減も一因となり、国内全体が「人手不足」への対応に苦心しています。
建設業界にフォーカスすると、特に深刻化しているのが「職人」の不足です。


国土交通省によると、
建設技能者(職人)の数はこれまでのピークが1997年の455万人。
この年を境に減少に転じ、
直近2022年が当時の3分の2の規模となる302万人でした。
特にコロナ禍以降、2020年からの2年間で16万人減と、
減少幅が拡大していることも懸念点です。


さらに職人の高齢化と成り手不足も進んでいます。
国土交通省の2022年発表データによると、
建設技能者のうち、60代以上が全体の25.7%を占めます。
今後10~20年の間で大半が引退することも考えられます。


そのリタイアで不足する人材を若手でカバーしたいところですが、
29歳以下の建設技能者は全体の11.7%に留まっています。
この若年層の働き手の確保や育成も喫緊の課題です。
このような背景もあり、職人確保の動きが住宅会社の中で活発になっています。


大手の中では積水ハウスがそのうちの1社です。
グループの積水ハウス建設で、職人育成を加速させています。
同社のテコ入れ施策の一つは、採用人数の拡大。
これまで職人候補生として、
高校・専門学校卒の採用を行ってきましたが、
今後はこの採用をより強化する方針で、
2024年度の採用人数の目標を2023年度実績比で2.4倍の95人、
2025年度には133人まで増やす予定であることを発表しています。


さらに、積水ハウスでは就職希望者の呼び水とすべく、
職人の魅力度向上にも取り組んでいます。
その一つは給与面の見直しで、
2023年4月入社の高卒初任給については月収・年収ベースで11%引き上げました。
新入社員だけでなく、既存の職人として働く社員の給与も同様で、
2024年4月以降、30代の課長クラスの年収を最大約900万円と、
上げ幅としては現在の1.5倍~2倍弱まで増やす計画です。


同社ではこのほかにも、職人の名称を「クラフター」に変更したり、
ユニフォームのデザインを刷新したりするなど、
職人のイメージアップを図っています。
また、昨年11月には、
大工の技術力を競う積水ハウス独自の選手権
「WAZA 2023」を初めて開催しました。
会場はインテックス大阪。
イベントMCにプロのアナウンサーを起用し、
ステージを造ってアーティストのコンサートさながらの演出も行いました。


このイベントは多くのメディアにも取り上げられましたが、
職人が活躍している姿などを発信することも、
若者を呼び込む上では欠かせない取り組みと言えます。


海外人材を雇い入れる住宅会社


今後人材戦略において、日本人だけでなく、
海外人材の雇い入れを見据える必要があるかもしれません。
三重のトップビルダーであるアサヒグローバルホームでは
10年前から技能実習生の採用を行ってきました。


これまでコロナ禍で受入れを行わなかった年度もありますが、
受入れた技能実習生は10年間で累計40名近くに上ります。
同社が受入れを行っているのはフィリピン人。
実際に現地の日本語学校まで赴いて、採用活動を行っているとのことです。
事前に実施した性格判断やIQテストで会社規定を上回った学生と面接し、
本人の真剣さ、ひたむきさを確認して採用を決めています。


実習生の来日後は、
仕事のことから日々の暮らしのことまで様々なサポートを行っています。
その中でも実習生に人気なのが毎月開催している食事会。
本人の要望を聞いて、これまでに焼き肉店などで開催してきました。
このほか春はBBQ、夏はプールと季節毎のイベントや、
在留期間が終わるタイミングでの卒業旅行など、
多様なイベントを企画しています。


さらに福利厚生として、毎月1人当たり10kgの米を提供しているほか、
住まいは専用の社員寮を用意しています。
この寮の共用のLDKにはビリヤード台が備え付けられているなど、
実習生が集まりやすい空間としています。
実習生同士のコミュニケーションが生まれやすく、
関係性も深まっているとのことです。


実習生が担う業務は建て方工事です。
10年前の受け入れ当初は、
1日で済ませられる建て方が3日かかるなど苦労も多かったとのことです。
しかし現在では、技能実習生の先輩が後輩に教える文化ができあがり、
作業効率も向上しています。


同社は年間500棟内外の建物を建設していますが、
その内9割以上に実習生が携わっており、
もはや海外人材は欠かせない存在と言えます。


(情報提供:住宅産業研究)

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