流行の兆し?「高性能賃貸住宅」市場動向
高性能賃貸住宅流行の背景とそのメリットや効果
ZEHを満たすなどの高性能賃貸住宅が流行の兆しを見せています。
最新の実例等は後ほど紹介していきますが、
大手ハウスメーカーだけでなく、
地場のビルダーでも高性能賃貸に着手している例が
散見されるようになってきました。
今回はこの背景に何があるのかについて、考えていきたいと思います。
高性能賃貸住宅のメリットとはなんでしょうか?
主に、
環境面における社会的意義
入居者メリット
オーナーメリット
という3つの側面から紹介していきます。
カーボンニュートラルが世界的に進んでいることは
最早言うまでもないでしょう。
賃貸に限ったことではありませんが、
高性能でCO2排出量の少ない建物が、今、世の中に求められています。
戸建に比べて多くの人が居住する高性能賃貸住宅は、
社会的意義がより大きいと言えるでしょう。
入居者にとってのメリットはまず、住み心地です。
さまざまな会社が
賃貸住宅入居者の不満を調査するようなアンケートを行っていますが、
「夏暑く、冬寒い」という回答は
ほとんどのアンケートで上位にランクインしています。
例えば、LIXIL住宅研究所の「賃貸住宅の不満に関する調査報告」では
「夏暑く、冬寒い」という回答は
「上階の足音や声が響く」という回答に次いで2位。
比率で言えば約25%の人が現在住んでいる賃貸住宅の
温熱環境に不満があるという結果になっています。
賃貸居住の高齢者も増えてきている昨今、
高性能賃貸の普及はヒートショックなどの
社会課題の解決にも寄与するでしょう。
また高性能住宅は住み心地だけでなく、光熱費削減にもつながります。
エネルギー価格の高騰が続く今、
そのメリットは非常に有用性を高めています。
入居者ニーズが高く、入居者に選ばれやすいということは、
オーナーにとっても価値が高いということになります。
入居率が高くなることが見込める他、高い賃料設定も可能になります。
ただ単価が上がることで利回りが低下する可能性もあるということが、
その裏側のデメリットとなります。
それでも、高性能賃貸は建物としての資産価値が残りやすく、
世の中に貢献するという利点があります。
こういったメリットと脱炭素の機運から高性能賃貸住宅は注目を集め、
徐々に取り組む会社が増加してきています。
高性能賃貸住宅の実例と今後
2017年からZEH賃貸住宅に取り組んできた大東建託は、
2021年に埼玉県草加市にLCCM賃貸住宅の1号棟を建設。
木造2×4工法の2階建て6世帯、太陽光発電容量32.4kWの建物で、
この1号棟を始めとしたLCCM賃貸住宅普及プロジェクトは国土交通省の
「令和4・5年度サスティナブル建築物先導事業(省CO2先導型)」
に採択されています。
大東建託は日本でLCCM賃貸住宅を普及させる意義についての講演なども
行っており、高性能賃貸の普及に積極的です。
大和ハウス工業は、
全天候型3電池連携システムを搭載した
新築賃貸住宅の実用化実験を開始しています。
実証実験を行う物件の性能は、全「戸」でZEH仕様、
棟単位でもZEH-Mの基準を満たす仕様となっています。
屋上には太陽光発電システムを設置し、
各住戸に約4kWのパネルを割り振ることで、
発電した電気を各住戸に供給します。
余剰電力は蓄電池に貯め、夜間や停電時に利用できるようになっています。
大手メーカーだけでなく、
地場ビルダーも高性能賃貸の建築に取り組んでいます。
埼玉県小鹿野町の高橋建築は、
パッシブハウス仕様のアパートを秩父市に建築。
この建物は2LDKの4住戸からなり、充填断熱と付加断熱の組み合わせ、
トリプルガラス樹脂サッシの使用などにより、
HEAT20 G3基準を超えるUa値0.21を達成しています。
また、パッシブ設計の鍵である日射遮蔽のために、
庇を設けるなどの工夫も行っています。
高性能賃貸普及の壁として、
入居者への訴求をどうするかというところがあるでしょう。
オーナーへの訴求は建築側からできるとして、実際の入居者への訴求を、
委託している不動産屋等が行うのはハードルが高い部分があります。
この問題への1つの対策としては、
賃貸住宅の建築から入居者の対応まで、
自社にて一気通貫で行うという選択肢が挙げられます。
着工戸数や集客数の減少から、
ワンストップ対応力向上をテーマに掲げている住宅会社は多く、
これまで新築戸建のみを扱っていた店舗で、
マンションや賃貸も扱い始めたというケースも
見られるようになってきました。
ワンストップ対応力向上の一環として、
社会的意義も大きい高性能賃貸に取り組んでいくのも良いかもしれません。
(情報提供:住宅産業研究)