政府・地方自治体が推進する「空き家対策」業界ニュース
政府・地方自治体が推進する「空き家対策」
政府や地方自治体は、増え続ける空き家の対策に本腰を入れ始めています。
今年に入ってからは「空家等対策の推進に関する特別措置法」、
いわゆる空家特措法が一部改正となりました。
空家特措法は建物自体の再利用や処分の促進を目的とする法律です。
この法律が施行された2015年以降、
景観に深刻な影響を及ぼしたり、崩壊の危険性があって
地域住民の安全を脅かしたりするような空き家を「特定空家」として、
この空き家に該当すると固定資産税優遇の解除といった
措置が取られることとなりました。
今年の空家特措法改正では、
「特定空家」には該当せずともその予備軍と言える、
管理が行き届いていない空き家を「管理不全空家」とし、
市区町村長から指導や勧告ができるようになりました。
加えて、これらの空き家に対しても「特定空家」と同様に
固定資産税優遇が解除されることとなります。
行政の空き家に対する方針は、
端的に言うと「管理が徹底できない空き家に対しては課税し、
活用が困難な建物は除却を促す」ということです。
現在は空き家の除却費用に対して補助金を出す自治体も増えています。
一方で、有用な空き家活用に対しての支援制度も用意しています。
国交省、ナイスな空き家活用策や空き家ビジネスを補助金でサポート
国土交通省は毎年「空き家対策モデル事業」と題し、
有用な空き家対策の取り組みをNPOや民間事業者などから募集しています。
この目的は空き家の発生抑制、
利活用及び除却等の空き家対策といった全国に共通する課題に対して、
これらの抜本的な解決を図ることであり、
民間事業者などの新規ビジネスモデルや取組を支援の対象とします。
この7月には、令和5年度の「空き家対策モデル事業」の採択結果が発表され、
採択件数は110件に上りました。
その事業者の一つが「福井コンピュータアーキテクト」です。
同社は建築CAD「アーキトレンド」で知られるCADベンダーの1社です。
福井県あわら市との官民連携で空き家のリノベーションイメージを訴求する
「空き家メタバンク」を構築しており、ここでの取り組みが採択されました。
今となっては多くの地方自治体が運営している空き家バンクですが、
ここに掲載されている物件情報は多くの場合、図面と写真です。
そこで、「空き家メタバンク」では同社の得意分野でもある
メタバースやAIなど最新テクノロジーを活用し、
空き家物件の3Dモデルや360度パノラマの
リノベーションイメージを掲載しています。
具体的な空間イメージが体感できることで
空き家のリノベーション需要を高める狙いがあります。
さらに「空き家メタバンク」に掲載するリノベーション案には
市内の住宅会社などに監修として入ってもらい、
空き家購入検討者とのマッチングも行う計画です。
空き家メタバンクの一般公開は
2023年10月以降を予定しているとのことです。
地方自治体の空き家テコ入れ策!
政府だけでなく地方自治体も空き家対策に注力しつつあり、
高知県もその1つです。
別荘などの二次的住宅を除いた高知県の空き家率は
2018年住宅・土地統計調査によると全国4番目に高い18.3%。
同県が目下取り組んでいる空き家対策は、2つあります。
1つ目が、自治会や高齢者サロンなどに司法書士を無料で派遣する
「相続おしかけ講座」です。
空き家の発生要因の一つである相続に着目し、
県民に対して相続や遺言の基本ルール、
必要な手続きなどについて知ってもらうことで、
空き家の管理や有効活用にもつなげる狙いがあります。
講座は1コマあたり90分間で催されています。
2つ目が、移住希望者向けのポータルサイト
「高知家で暮らす。」に、
VRで空き家の内覧ができる機能を取り入れたことです。
このテクノロジーを提供したのは
空間データ活用プラットフォーム
「スペースリー」を展開する株式会社スペースリー。
全国でも導入事例は少なく、四国では初めての試みです。
県外の移住希望者が物件情報をネット上で閲覧する上での
利便性向上も狙いです。
「高知家で暮らす。」に登録された物件のうち、
既に約10軒以上に導入されています。
パソコンやスマートフォンによる内覧のほか、
AIを活用して家具のレイアウトを試すことも可能です。
実際に首都圏からの問い合わせが一定数あるとのことですが、
住まいを探す上で高知に何度も足を運ぶのは困難です。
一方写真だけでは情報が十分に伝わらないことを危惧し、
遠方でもWEB上で自由に見られるVRを導入するに至りました。
スペースリーは市や町に360度カメラを貸し出し、
市町の職員自らが物件の撮影をしています。
2023年度中には累計100軒のVR掲載を目標としています。
(情報提供:住宅産業研究)