「住宅会社の価格戦略~ローコスト編~」商品・トレンド
規格商品を活用しローコストを実現
前回は住宅会社が高単価受注をするための戦略を紹介しましたが、
今回はローコスト戦略をとる住宅会社の取り組みを紹介します。
資材価格の高騰で、価格を抑えることにも限界がありますが、
それでも様々な工夫でローコスト商品を実現している会社は存在します。
ローコストを実現するための手法の1つが、規格商品の活用です。
規格商品であれば設計等の手間が削減され、各資材の利用も効率化されます。
アイフルホームはセミオーダースタイルの住宅「Lodina」を販売しています。
子育て世代に向け、家事効率を高める設備などを標準仕様とし、
間取りや外観デザイン、内装テイスト、断熱グレードなどを
選ぶだけで理想の暮らしが実現できる商品となっています。
同商品の特長が、建物の大きさが同じであれば、
一定のルール内で間取りを変更しても
価格の変わらない定額制を採用していることです。
価格は27坪の2階建てで1,485万円、21坪の平屋で1,320万円となっています。
規格商品の中でも、ベースをミニマムなものにして、
取り揃えたオプションの中からユーザーに必要なものを
セレクトしてもらうという方法で価格をさらに抑制している例も見られます。
一条工務店は規格商品「HUGme」を販売しています。
同商品は耐震等級3を超える「2倍耐震」の採用に加え、
全プランでZEHの断熱基準をクリアしながらも、
本体価格1,490万円~という低価格を実現。
注文商品では標準であるトリプルガラスや太陽光発電、
蓄電池などをオプション仕様とすることで、本体価格を抑えています。
今後メインの一次取得者層となるZ世代は
「タイパ」を求める傾向にあると言われています。
彼/彼女らは住宅を購入する際も、0から作り上げていく注文住宅より、
ある程度カタチが出来上がっている規格商品を望む人が
多くなってくるのではないかと考えられます。
価格の点だけでなく、
このような点からも規格商品の需要は増えると思われます。
建物サイズを小さくすることでローコストを実現
当然のことではありますが、建物のサイズが大きいほど価格は高くなり、
サイズが小さいほど価格は抑えられます。
建物をコンパクトにすることで価格を抑制している住宅会社の代表的な例が、
首都圏で活躍するオープンハウスです。
首都圏は土地が高価で、
面積の大きい土地を入手することが難しいということもありますが、
狭小地を更に切り分け、建物サイズを小さくすることで
建物本体にかかる価格を抑えています。
地方ビルダーでの例を挙げると、秋田県のクリエイトホームズがあります。
同社は16~22坪の平屋「小さな平屋シリーズ」
という商品ラインナップを保有しています。
同商品はZEH基準の断熱性能を満たしながらも、
建物サイズを小さくすることで、1,000万円台前半という価格を実現。
YouTubeでこの商品を紹介した動画は
2023年5月時点で130万回以上再生されており、ニーズが高いことが伺えます。
住まい手を小家族に絞り、建物をミニマムにし、
価格を抑えているという会社もいくつかあります。
千葉県のネクストワンインターナショナルは
with mamaブランドを展開しています。
同ブランドの商品「cute」はシングルマザー世帯に向けたもので、
延床面積を25坪程度に抑えることでローコストを実現。
支払額で言えば月々5万円程度で済む価格設定になっています。
建物は小さいながらも収納スペースを多く設ける、
室内物干しスペースを確保するなど、
忙しいママに向けての提案は忘れていません。
この商品はシングルマザーを支えるという点で地域貢献の面が大きいと言え、
会社のブランディングの一環にもなっているようです。
北陸のトップビルダー石友ホームのグループ会社である
フレンドリーハウスでは、「2人暮らしの新築専門店」を展開しています。
同社のターゲットは主にシングルマザーやアクティブシニア、
大人親子や共働き夫婦。
ターゲットごとに20坪程度のプランを用意しており、
アクティブシニアに向けた商品であれば平屋建て1LDK17坪で1,267万円。
共働き夫婦に向けた商品は2階建て2LDK20坪で1,289万となっています。
ユーザーとしても必要以上に広い家は求めていないという声があり、
そのニーズを吸い上げてローコストを実現した商品です。
今回はローコスト実現のための工夫を紹介しましたが、
管理ツールのDX化などを進め、
原価管理の再徹底を行うことなども有効な手段の1つと言えます。
様々な側面から自社の取り組みを見直し、利益を確保しつつ、
できるだけ適正な価格で住宅を提供できるようにしたいものです。
(情報提供:住宅産業研究)