「日本の地価動向と住宅市場」業界ニュース
戸建住宅購入検討者の土地なし比率が高まっている昨今、
住宅会社にとって土地戦略は必須のものとなっています。
土地の情報量や価格は随時変化し、
顧客の家づくりの計画にも大きく影響します。
地場の不動産業者などとも連携しつつ、
営業エリア内の土地動向は随時チェックしていきたいところです。
全国平均地価は2年連続上昇
この3月、2023年1月1日時点での公示地価が発表されました。
全用途の全国平均は前年比1.6%上昇ということで、
2年連続の上昇となりました。
この上昇率は、リーマンショック前年である2008年の1.7%に次ぐ水準です。
上昇地点は調査対象の全国2.6万地点のうち58%を占め、
前年(43.6%)から14ポイントほど増えています。
用途別で見ると、住宅地は全国で1.4%上昇。
都市部でマンション価格が高騰したほか、
交通利便性が高い郊外エリアにおいても地価の上昇が見られます。
地域別では三大都市圏が1.7%上昇しており、
特に東京圏と名古屋圏が2%以上の上昇と牽引しました。
地方圏でも1.2%上昇となっています。
地方圏において、地価上昇を牽引するのは札仙広福であり、
この地方4市に関しては8.6%も上昇しています。
局地的な地価上昇も発生しています。
その一つが北海道の北広島市です。
地元のプロ野球チームの新球場オープンに際し、
周辺エリアの再開発が進んでいます。
これにより、球場のある北広島市の複数地点で住宅地地価は3割上昇しました。
地価上昇率の全国上位10地点は、住宅地、商業地共に北海道が独占しています。
上位4地点が北広島市内、そして江別市内、
恵庭市内などの地点がランクインしました。
北海道全体では、住宅地地価が7.6%上昇しており、
都道府県別では2年連続全国トップです。
2022年度の住宅着工、「分譲住宅」が「持家」を上回る
2022年度の住宅着工統計が発表されました。
利用関係別で見ると、持家の着工戸数は24.8万戸。
25万戸を下回ったのは1960年度以来で、62年ぶりです。
さらに、分譲住宅の着工戸数が持家着工を上回りました。
近年は分譲事業に注力する住宅会社が増えていることもあり、
持家着工<分譲着工という傾向は今後も続くものと思われます。
「大手ハウスメーカー」と言われるような注文系住宅会社も、
分譲事業強化を明確に打ち出しています。
その1社が大和ハウス工業です。
同社は、1970年代に「ネオポリス」という
大型分譲地開発を全国的に展開していました。
この中には1,000区画超の分譲地もありますが、
40年以上が経過した今では街の高齢化が進み、空き家も発生しています。
そこで同社では、
ネオポリスを再生するプロジェクト「リブネスタウン」を展開しています。
ネオポリス開発当時と比較すると、今の分譲事業の規模は小さいです。
しかし、今後建売販売事業を強化する方針を打ち出しました。
数値目標としては、2026年度時点で、
直近の約3倍となる5,000戸を掲げています。
直近の決算によると、戸建住宅の販売は注文住宅がボリュームですが、
今後、建売販売の比率を5割まで高める計画です。
建売事業の肝となるのは土地の仕入れであり、
同社では全国約80ヶ所の事業所にて、
建売住宅向けの用地仕入れ担当者を配置しました。
販売についても、建売住宅の専任担当者の配置も視野に入れています。
セキスイハイムブランドを展開する積水化学工業も、
近年分譲事業を強化しています。
「リードタウン」というブランドを打ち出し、
第1弾として2019年に誕生した埼玉県朝霞市の「あさかリードタウン」は、
自社工場跡地の再開発によるものでした。
この分譲地の最大の特長は、レジリエンス性の高さです。
例えば断水や停電を防ぐため、ライフラインを地中埋設しています。
更に雨水貯留・浸透施設を埋設しており、
豪雨や台風時の雨水を一時的に地中に貯めることで土地への浸水を防ぎます。
積水化学の技術力を活かし、
排水管は直径180㎝という口径の大きいものを導入し、
貯まった雨水の排水量のコントロールも可能としています。
開発総面積は7.4万平米。
南エリアには戸建分譲街区、北エリアには分譲マンションを構えました。
この戸建とマンションを組み合わせた街区計画も
同ブランドの特徴の一つと言えます。
積水化学工業は現在、首都圏を中心に複数の分譲地開発を手掛けています。
同社の強みであるスマート設備で実現したゼロエネ住宅だけでなく、
独自開発した住民向けのスマホアプリや、
街全体で強化されたセキュリティなどもユーザーに選ばれる要因です。
(情報提供:住宅産業研究)