「日本の課題『空き家』の処方箋」業界ニュース
日本の空き家は年々増加傾向にあり、
総務省の「住宅・土地統計調査」によれば、2018年時点で849万戸でした。
その内訳としては、
過半数の54%が、賃貸や売却用といった市場に流通している住宅です。
次に多いのが、
居住目的のない「その他の住宅」349万戸で、空き家の41%を占めます。
「その他の住宅」は物置として扱われている物件や放置状態にある物件のほか、
崩壊の危険性がある「特定空家」も含まれています。
行政が特に問題視しているのは「その他の住宅」で、
2015年に「空き家特別措置法」が施行され、
「特定空家」は固定資産税軽減の適用外となりました。
行政はその後も空き家問題の解決に向け、様々な対応策を講じています。
空き家関連法の改正進む
この3月、政府は空き家特別措置法の改正案を閣議決定しました。
この改正案は、今国会にて審議される予定です。
改正案のポイントの一つは「空き家オーナーの責務強化」です。
現行法では、特定空家のみが固定資産税の軽減対象から除外されていますが、
今回の改正案は、特定空家には該当しないものの管理が不十分で、
放置すれば倒壊などの危険性が高まると推測される物件も、
「管理不全空き家」として税優遇の対象外となります。
この改正案は、空き家オーナーに適切な管理を促す狙いがあります。
空き家を手放したり、活用したりするきっかけとなるかもしれません。
改正案の中には、空き家の活用促進を目的とする制度も含まれています。
それが「空家等活用促進区域」の設定です。
市町村などの地方自治体が、
中心市街地や観光地などにおいて「活用促進区域」を定められる制度で、
用途が住宅に限定される区域でも、
店舗やカフェなどへのコンバージョンがしやすくなるというものです。
現在、民間企業が展開する空き家ビジネスの中にも、
商業的に活用するケースが多く見られ、
自治体としてもこのようなビジネスモデルを推進することとなります。
空き家特別措置法の改正は、今回成立すれば2015年の施行以来初となります。
しかしこれ以外にも空き家関連の法整備が進んでおり、
例えば今年4月末から「相続土地国庫帰属制度」が施行されました。
名称の通り、相続土地を国に返還できる制度です。
空き家所有のきっかけの多くは相続ということもあり、
そのようなオーナーのセーフティネットと言えます。
さらに、来年度には相続登記義務化の施行が予定されています。
全国に多数ある所有者不明の空き家を減らし、
「管理不全空き家」の発生を防ぐ狙いがあります。
空き家は「利活用」or「解体」、「放置」はNG
政府だけでなく、地方自治体も空き家の管理厳格化に動いています。
その1つが京都市です。
同市は空き家オーナーなどを課税対象とする「非居住住宅利活用促進税」、
通称「空き家税」を2026年度に導入予定とのことです。
京都市の新税は家屋の固定資産評価額に応じて変動しますが、
空き家オーナーは当該物件の固定資産税の概ね2分の1程度を
市に納めることとなります。
また、京町家などの歴史的建造物や事業所として使用する建物のほか、
賃貸用の空き家などのように一時的に居住していない場合は
課税対象から除外されます。
京都市はこの空き家税に該当する物件が1.5万件程度、
9.5億円の税収を見込んでおり、
この税収を改めて空き家対策などに充てる計画です。
空き家は放置し続けると、将来的に地域に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのためオーナーは、空き家を解体することも視野に入れる必要があります。
自治体の中には家屋解体に掛かる費用を助成するところもあります。
北海道の妹背牛町では、
今年度から住宅撤去に掛かる費用の助成上限額を
従来の2倍となる100万円に引き上げました。
地方自治体の中では最高額の助成金と見られます。
妹背牛町のような多雪地域は積雪によって
空き家が崩壊するなどの事故が起こることもあり、
空き家への対応は急務です。
妹背牛町はこれまで空き家オーナーと解体業者の
マッチングプラットフォーム「クラッソーネ」との業務提携などにも
取り組んできました。
行政には空き家の利活用を促すだけでなく、
解体などを支援する制度づくりも求められていると言えます。
(情報提供:住宅産業研究所)