「中高層木造建築について」商品・トレンド
なぜ今中高層木造建築が求められるのか
近年、中高層の木造建築が注目を浴びています。
住宅メーカーを筆頭に、ゼネコンやデベロッパーなども
建物の木造・木質化に参入し、これまで実現できなかった
中高層の木造建築を手掛けるようになってきました。
この背景としてあるものの1つが、SDGs及び
世界的なカーボンニュートラルへの流れです。
木材は炭素を貯蔵することができ、
製造時のエネルギー消費量も小さいため、
他資材を木で代替すればCO2の削減に繋がるとされています。
住宅1棟あたりの炭素貯蔵量は
鉄筋コンクリート造・鉄骨造の約4倍と言われています。
また、木材はリユースによる再生産が可能で、
循環型の資源としても優れています。
背景としてもう1つ、日本の人工林が
木材としての適齢期を迎えていることがあります。
日本は、国土の3分の2を森林が占める世界でも
有数の森林国であり、その森林のうちの4割は人工林です。
森林の蓄積はその人工林を中心に
毎年6,000立米増加しているといい、
現在、戦後に植林された人工林は50年を経過。
木材として利用するのに適した時期にあります。
これらを資源として有効活用すれば、
雇用の創出や地方創生にも繋がります。
その他、中高層の木造建築は、
木の香りのリラックス効果なども注目されています。
木の香りには集中力を高める効果もあると言われており、
学習の場やオフィスに適しているのではないかとされています。
これらの点に注目し、
政府としても中高層の木造建築を推進しています。
昨年10月には「公共建築物木材利用促進法」が改正され、
木材利用促進の対象が公共建築物から民間建築物を含む
建築物一般となりました。
2022年6月には建築基準法改正があり、
木造中高層建築が建てやすくなりました。
木材利用を進めるため、農林水産大臣を本部長とする
「木材利用促進本部」が設立されたり、
事業者による取り組みを後押しする
「建築物木材利用促進協定制度」が創設されたりもしています。
林野庁でも木質耐火部材の開発・利用実証など、
様々な支援を行っており、木材利用の促進に向けた環境は
国を挙げて整備されつつあります。
コンクリートに比べて強度の劣るイメージがある木材ですが、
CLTやLVLといった、木材でもコンクリートと遜色ない
強度を誇る建材も発展してきており、
中高層木造建築を後押しする流れは高まってきています。
各社の中高層木造建築への取り組み
以下、各社の中高層木造建築への取り組みを紹介していきます。
まず、住友林業の取り組みです。
同社では、現在ほど注目度が高くない時から
中高層木造建築に取り組み、
2018年には「W350」という計画をスタートしました。
住友林業が350周年を迎える2041年に、
高さ350mの木造超高層建築物を実現できる
技術を完成させるというプロジェクトです。
ホームページでも、メニューに表示されるカテゴリーとして
「中大規模木造建築」という項目があり、
そこでは非住宅における木造化・木質化の
取り組みを紹介しています。
商業施設のほか、教育施設や医療施設など様々な施設の
「木化事例」があり、会社として中大規模木造建築に
かなり力を入れて取り組んでいることがわかります。
三井ホームは木造マンション「MOCXION(モクシオン)」を開発し、
不動産業界に「木造マンション」という新ジャンルを確立しました。
これまで木造賃貸住宅は、大手賃貸入居者募集ポータルサイトに
「マンション」として登録することができませんでした。
しかしMOCXIONは耐久・耐火・耐震性に優れ、
住宅性能評価書も取得しているため、木造賃貸住宅でありながら
マンションとしての登録を可能にしました。
2021年11月に着工した「MOCXION INAGI」の炭素貯蔵量は
杉の木換算で2,953本相当となるそうです。
その他、アキュラホームは純木造ビルの普及型を開発中。
実物大耐震実験を複数回行い、
中規模木造建築普及のため、データを蓄積しています。
この11月には川崎市の総合展示場に
5階建純木造のモデルハウスをオープンします。
ハウスメーカー以外だと、
長谷工コーポレーションが木造集合住宅の高層化・分譲化を推進。
野村不動産では木造ハイブリッド構造の
中高層オフィスビルを今年8月に着工するなど、
住宅業界だけでなく建設業界全体が、
環境貢献のため中高層建築の木造・木質化に取り組み始めています。
(情報提供:住宅産業研究所)