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「シェア拡大のためのマルチブランド戦略」経営・人材育成

コミュニケーション
2021.12.6

大手企業による住宅市場の寡占化が進行しています。
住宅着工が減少していくのと同時に
中小企業の淘汰も進むとすれば、
ますます大手のシェアが高まることになるでしょう。

戸建住宅の棟数シェアの推移で見ると、
ハウスメーカーよりもビルダーのほうに勢いがあり、
飯田グループを始めとする大手分譲ビルダーは
コロナ禍においてむしろ販売は好調です。


また、アイ工務店や秀光ビルド、ヒノキヤグループ等の
広域展開型の注文ビルダーも、
この10年の間でエリアと棟数を大きく拡大してきています。

これらのビルダーのトップランナーは年間棟数でいうと
数千棟という規模で、全国の住宅市場においても
準メーカー的な存在感を示しています。


その下の規模が1,000棟クラスということになりますが、
エリア拡大やグループ統合によって、
今まさに1,000棟という一つの壁を乗り越えつつある
有力ビルダーが、全国の各地域ブロックで割拠し始めています。


北海道のロゴスホームは札幌の豊栄建設を、
茨城のノーブルホームは栃木の丸和住宅をM&Aで
グループに加えたことで、
2020年度の着工棟数は900棟を超えました。


富山の老舗の石友ホームグループ、
熊本のシアーズホームグループは
子会社との合算で1,000棟規模。


元はエス・バイ・エルの販社で、
在来木造の自社ブランドへのシフトと
エリア拡大を続ける岡山のライフデザイン・カバヤも、
受注ベースではすでに1,000棟を超えています。


エリアトップビルダーの商品構成

これらのポスト1,000棟ビルダーに概ね共通することの
一つがマルチブランド戦略です。
これまで広域に展開してきたタマホームやレオハウス、
アキュラホーム等の大型ビルダーは
基本的に単一ブランドでの展開でした。


それに対し、各エリアブロックで1,000棟の規模に迫るビルダーは、
複数のブランドを展開することによってシェアを高めてきました。
代表的なのが石友ホームグループとシアーズホームグループです。


石友はメインブランドの石友ホームと
ローコストのウッドライフホーム、
元は戸建賃貸の商品として開発した更に廉価の
インカムハウスをそれぞれ分社化しています。


シアーズもメインのシアーズホームと
ローコストのジャストホーム、
土地とセット販売のサンタ不動産に加え、
桧家住宅のFCにも加盟しています。


ポスト1,000棟ビルダーの中でも
老舗であるこの2社が、後続のビルダー他社から
ベンチマークされることが多いということも、
ビルダーの間にマルチブランド戦略が
広まってきた要因でしょう。


1,000棟よりも規模が小さい各県のトップビルダーでも、
マルチブランド戦略でシェアを高めているケースが
少なくありません。


輸入住宅や自然素材、アウトドアテイスト等6ブランドを展開し、
FCも運営する札幌のジョンソンホームズ、
アイフルFCやアイムの家FC等で分社化する
宮城の東和総合住宅グループ、
2社6ブランド体制で急成長してきた
鹿児島の国分ハウジンググループ等が、
その代表格と言えます。

年間200棟規模ぐらいまでは、超高性能や超ローコスト、
デザイン特化等の1ブランドによって、
地域の一定の需要を掴むことで到達できるかもしれませんが、
数県に跨るエリアブロックで圧倒的トップを目指すとなると、
幅広い需要に対応できるブランドを
複数設けるほうが近道となるでしょう。

マルチブランド戦略のメリット


マルチブランド戦略のメリットは、
地域の住宅需要を幅広くカバーできること以外にもあります。


すでに出店している地域に
別ブランドで2店舗目、3店舗目を出すことができ、
顧客の属性や要望、予算によっては
ブランド間で相互に送客したり、
「あのブランドもこのブランドも実はこの会社のグループ」と、
地域における自社の総合的な認知度を高めることができます。


ブランドごとに会社や事業部を分けて
店舗を増やすことができるということは、
それだけ社員が目指す管理職のポストを増やせるということで、
社員のモチベーション向上と成長にもつながります。


また、かつてのタマホームのように
ローコストの価格訴求を前面に出して急成長してきたのではなく、
マルチブランド戦略によって
ハウスメーカー検討客にも選ばれる商品を備え、
準メーカー的なポジションを確立していることも、
ポスト1,000棟ビルダーに概ね共通する特徴です。


ハウスメーカーが今後、
戸建住宅以外の事業を伸ばすことに注力し、
住宅は数よりも1棟単価を高めて
一段上の客層を狙う方向に進むのであれば、
これまでハウスメーカーが握っていた
シェアの一部をビルダーが奪いに行けるはずです。


メーカー競合を想定したハイグレードの商品と、
ローコスト需要に対応する廉価版商品を
別ブランドで展開できることが、
マルチブランド戦略のメリットです。


(情報提供:住宅産業研究所)

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