「分譲大手好調ビルダーのIT効率化」IoT/AI/VR関係
2020年度の住宅各社の業績はコロナ禍の影響もあり、
ハウスメーカーの多くで減収減益決算が目立ちました。
それとは対照的に、売上を伸ばしたのが分譲大手ビルダーです。
2020年度は飯田グループが3.9%増収、
オープンハウスが6.6%増収、
ケイアイスター不動産が29.0%増収と、
コロナ禍をきっかけに賃貸居住者の新築戸建需要が高まり、
WEBで情報を探しやすく、商談時間が短く、
すぐに住み替えられる建売住宅が良く売れたということです。
売上以上に好調なのが利益です。
飯田グループは経常利益で51.9%の増益、
オープンハウスは40.8%増益、
ケイアイスター不動産は102.3%増益と、利益を大きく伸ばしました。
仕入れた物件を値引き販売無しの高回転で
売り続けられた結果と見られます。
建売住宅はウッドショックの影響も最小限?
新築住宅の月次着工戸数推移を見ると、
2020年度はコロナ禍の影響が大きくマイナス基調が続いていましたが、
持家は2020年10月から前年同月を上回り、
それに遅れて建売分譲も今年5月に
前年同月比10.0%とプラスに転じました。
在庫の販売好調に対して追い付いていなかった建売住宅の着工が、
ようやく上手く回り始めたということでしょう。
目の前にはウッドショックという懸念材料はありますが、
土地も合わせた建売住宅の販売価格の総額から見れば
原価に占める木材の比率は低く、
原価の高騰を価格に転嫁したとしても、
販売への影響は注文住宅と比べて少ないと言えます。
輸入材から国産材へのシフトということでは、
オープンハウス、ケイアイスター、
三栄建築設計の分譲大手ビルダー3社が組む
(一社)日本木造分譲住宅協会も始動します。
スピードが要の分譲業界、IT活用は必須
請負型の事業である注文住宅に対し、
建売分譲は仕入れと在庫の確保が先行し、
いかに回転を早めて利益を残すかという事業です。
在庫と粗利の管理、販売効率の向上が生命線であるため、
分譲大手ビルダーではITやDXの導入による業務効率化にも
積極的に取り組んでいます。
オープンハウスでは、
AIとRPAを掛け合わせた物件チラシ全自動作成システムを開発し、
運用を始めています。
このシステムは、音声やテキストチャット等によって
ロボットに該当物件名を伝えると、
チラシ作成に必要な情報を
社内システムからロボットが自動で収集し、
AIが物件チラシを自動で作成して、
約2~3分でチャットやメールに
デジタルチラシを返信するというものです。
従来は営業担当者がユーザーのニーズに合わせて
物件のアピールポイントを反映したチラシを作成していましたが、
このシステムでは、「立地」「価格」「間取り」「学区」等、
アピールするポイントを変えたチラシを
最大14パターン作成することができるといいます。
これまで営業担当者が手作業で作成していたチラシ作成を
完全自動化することで、チラシ作成業務を年間約2,880時間、
広告審査時間を約900時間削減することができるということです。
ケイアイスター不動産では、
2017年に「不動産×IT」の指針を制定し、
2019年には「IT成長戦略ReTech 5本の矢」を制定して、
ITを駆使した様々な新サービスの開発に取り組んでいます。
分譲住宅事業では、「KEIAIプラットフォーム」として、
仕入から販売の各段階にIT技術を導入し、
生産性の向上を図っています。分譲用地の仕入れでは、
独自開発の土地仕入れシステム「ミツカルPro」を運用し、
このシステムの新たな機能として、
用地購入の判断を高速化させるAIアシスト機能の開発に着手しています。
同社では、これまでの注文住宅・分譲住宅事業で得られた
仲介業者からの仕入候補地データは3万件を超えており、
さらに1万件以上の実販売データを保持しています。
これらのデータに販売中物件や人口動態等の市況データを加え、
自社開発したAIに機械学習をさせることで、
超高速の買付判断を実現できる
仕入れ体制の構築を進めるということです。
「ミツカルPro」を運用し始めた21/3期の第Ⅰ四半期と
第Ⅳ四半期の用地仕入実績を比較すると、
案件情報数・仕入れ区画数はほぼ倍になり、
販売実績棟数も61%増と伸ばしています。
建売分譲の販売では、
IT技術を活用した無人見学会を取り入れるビルダーが
増えてきています。
物件の見学希望者からは事前に予約を受け付け、
見学会当日は玄関錠の遠隔操作と
見学者のスマホへの認証発行等によってセキュリティを確保します。
モデルハウスをプラン・デザインの参考として商談を進める
注文住宅に対し、建売分譲は実物を見て気に入ってもらえれば
購入を検討してもらえるため、
営業担当者による初回接客無しの無人見学会でも
その後の商談へとつなげられます。
コロナ禍をきっかけに、
非対面・非接触型の住宅販売の需要が高まり、
IT・DXによる業務効率化が進んだことも、
分譲大手ビルダーの好調要因と言えるでしょう。
(情報提供:住宅産業研究所)