「職人の熟練度に左右されない新基礎工法が登場」市場動向
建設業界が抱える課題の一つが職人不足です。
しかしながら、
実は建設業に携わる人材自体が減少傾向にあります。
総務省管轄の「労働力調査」によると、
建設業就業者数は1997年の685万人をピークに減少へと転じ、
2017年時点では20年前から約3割減少し、498万人でした。
その内、大工などの技能労働者は2017年時点で331万人。
職人も20年で約3割減少しているようです。
労働者数の減少と同じく、業界の高齢化も課題です。
建設業では、55歳以上の就業者が34.1%を占めています。
全産業の55歳以上の割合である29.7%と比較すると、
建設業は4.4ポイント上回っています。
職人不足問題待ったなしの建設業界
建設業界では就業者減少や高齢化が
取り上げられやすい課題ではありますが、
そもそもマンパワーに頼るビジネスモデル自体を
変えていく必要があるかもしれません。
もちろん人材の確保は最低限求められますが、
根本的な生産性向上が必須課題であり、
これをサポートするテクノロジーの導入なども
避けられない取り組みとなりつつあります。
住宅会社においては、
職人の中でも特に基礎業者不足が深刻化していると見られます。
新規参入についても、型枠鋼板やユンボなどの
工事に必要な機材のイニシャルコストが掛かることや、
これらの機材を保管するための敷地や倉庫なども必要となるため、
少数であることが現状です。
住宅会社としては、少ない基礎業者の中から、
より優良な業者を厳選したいというのが本音でしょう。
基礎のコールドジョイントや基礎立上り天端の不陸
といった仕上がり品質は、クレームの元となります。
多くの住宅会社は、基礎業者が不足しているという現状と、
業者を厳選したい気持ちのジレンマに陥っているところが
多いと考えられます。
これを解決するためには、品質を職人に頼るのではなく、
一定に保つことができる基礎工法の導入を
検討すべきかもしれません。
基礎立上りにプレキャストコンクリートを活用
今回紹介する基礎工法は、
ジャパンホームシールド(以下、JHS)の「アイランドベース」です。
JHSといえば、
地盤調査や家屋のインスペクション事業などが有名です。
地盤調査はこれまで180万棟、
建物インスペクションは23万棟の実績があります。
これらの実績を活かし、
2021年3月にこの新基礎工法をリリースしました。
アイランドベース最大の特徴はプレキャストコンクリート板
(以下、PCa板)を基礎の立上り部に使用することです。
コストについてはエリアなどによって異なりますが、
従来のベタ基礎と比較すると概ねプラス15~20%程度とのことです。
この工法におけるメリットは大きく4点あります。
まず、「工期短縮」。
現場打設式の基礎工法では2~3週間を要する工期を、
アイランドベースでは約1週間に短縮することができます。
これまでの実験棟では、
基礎面積70平米を工期5日で完成したこともあるようです。
本来必要なコンクリート打設後の養生期間についても、
スラブ部分のみで済むため、
天候による影響も受けにくいと言えます。
さらに、従来の基礎化粧が不要なため、
左官職人のコストも削減できます。
2つ目は「品質向上」です。
まず、PCa板の形状を工夫することで、
コールドジョイントの予防を実現しました。
また、PCa板自体は提携する製造工場で製造されたものですが、
品質を担保するため、「材料規定」や「材料受入検査」
「調合規定」「出荷規定」といった条件を設けています。
また、使用するコンクリートの強度にもこだわっており、
JASS5における設計供用期間「長期(100年)」に該当する
30N/平方ミリメートルの長寿命コンクリートを採用しています。
厳正な製造過程を経ることで
基礎立上りの天端の不陸を最大限無くし、
施工現場でのレベラーによるレベル調整も不要です。
アンカーボルトについては基本的に
現場差し込みのインサートタイプとしています。
3つ目は「手間削減」。
PCa板の設置にはクレーンを使用します。
部材数は基礎面積70平米であれば35~40で、
設置を始めてから仮置きまでに掛かる時間は1時間半程度です。
狭小地の物件においては、工場からユニック車で搬入、
そして仮置きまで行うこともあります。
JHSでは工事現場だけでなく、
住宅会社におけるバックオフィス業務の手間削減も図っています。
基礎伏図も作成し、
長期優良住宅や耐震等級3の物件にも対応可能です。
全棟構造計算も実施するとのことです。
4つ目は基礎内部の「通気性向上」です。
「アイランド」と称するように、
基礎内部立上り部が独立した設計を可能としているため、
配管レイアウトの自由度が高く配管の作業性も向上し、
基礎以外の工種でも工期短縮が期待できます。
また、通気性を確保しやすいこともあり、
近年増えている第一種換気システムの住宅との親和性も
高い基礎と言えます。
(情報提供:住宅産業研究所)