「アメリカで住宅市場活況」市場動向
ハウスメーカーがアメリカで好調
大手ハウスメーカーは2010年代以降、海外進出を進めています。
主な進出先としてはアメリカやオーストラリア、
タイやベトナムといった東南アジアが挙げられます。
そして、これらの国々の中でも現在、アメリカの住宅市場が活況で、
アメリカに進出している日本のハウスメーカーにも
追い風となっています。
アメリカの住宅市場を把握するための指標の一つに、
毎月商務省センサス局から発表される「住宅着工件数」があります。
アメリカ国内の住宅建設は季節ごとのばらつきが大きいため、
1ヶ月間に建設された新築住宅戸数に調整をかけた上で
年率換算した数字が発表されます。
2020年12月の住宅着工件数(季節調整済み)は、
年率換算で前月比5.8%増の166万9千戸に上りました。
この件数は、サブプライムローンによって活況を呈していた
2006年9月以来の高水準とのことです。
この要因の一つは、在宅勤務の普及で都市部から郊外に
移転する世帯を中心に住宅需要が拡大したことです。
日本でもコロナ以降、
東京の人口が転出超過によって減少し続けていますが、
日米問わず同様の現象が起きています。
そして、2つ目に住宅ローン金利が
過去最低水準に低下していることが挙げられます。
雇用の安定したユーザーにとっては
絶好の住宅購入の機会となっているようです。
そして、このアメリカにおいて、
売上を伸ばしている日本のハウスメーカーの1社が住友林業です。
同社は2011年以降、アメリカにてM&Aを展開してきました。
住友林業の2020年12月期(4~12月)決算によると、
「海外住宅・不動産セグメント」の所謂海外事業において売上高が
2020年3月期1~3Q(2019年4~12月)比9.7%プラスの3,524億円、
経常利益が同比27.5%プラスの440億円で着地しました。
同グループはアメリカやオーストラリアなどで事業展開しており、
いずれの国においても増収を達成していますが、
特にアメリカが堅調で、売上高は同比11.0%増の2,935億円、
経常利益は同比31.4%増の432億円と、海外事業を牽引しました。
販売戸数ベースではアメリカで同比833戸プラスの7,332戸と、
既に同グループの日本国内の年間供給棟数を上回っています。
そして、米国子会社が2020年10月にKnight Homes社を、
2021年2月にCDL homes, IncをM&Aで取得し、
現在アメリカ国内5社体制まで拡大しています。
2021年12月はコロナ禍で拡大している住宅需要の捕捉を図り、
アメリカでの年間販売戸数目標を1万1千戸に据えています。
2020年4月に代表取締役社長に就任した光吉氏は社員時代、
海外事業部が長く、
海外事業本部長として指揮を執っていたこともあり、
住友林業は今後も海外事業の拡大に注力していくと予想されます。
GAFAも住宅を手掛ける?
アメリカでは住宅着工が活況にありますが、
同時に中古住宅の価格も急上昇しています。
実際にはこの数年上昇傾向にありましたが、
コロナ禍で拍車がかかったと言えます。
全米不動産業者協会(NAR)によると、中古住宅の「中間価格」は
2020年8月に過去最高を記録したとのことです。
この「中間価格」とはアメリカの不動産市況の目安の一つで、
全取引の物件の価格を最低額から最高額まで並べた際、
その真ん中の価格を指します。
価格上昇の要因の一つはGAFAなどの大企業の存在です。
GAFAは従業員の年収が高く、さらに数万を超える従業員数のため、
本社周辺の住宅価格に与える影響も大きいと考えられます。
この煽りを受けているのはGAFAとは関係のない周辺住民で、
こうした層からの住宅価格の高騰に対する不満が募っているようです。
アマゾンなど大手テック企業が拠点を構えるエリアでは、
再開発によって高級化が進むケースもあり、
元の住民が住み続けられなくなる問題も起きています。
アマゾンがワシントン州ピュージェット地域だけで
7万5千人以上を雇っている影響で、
ワシントン州最大の都市であるシアトル市や
同市のあるキング郡において、低価格住宅の不足や
ホームレスの増加といった問題も起こっています。
そこでGAFAではこの住宅難を解消すべく、
低価格の住宅を手掛ける計画を打ち出しています。
現地ではこのような低価格住宅、
手ごろな価格の住宅と訳される中低所得者向けの住宅を
「affordable housing(アフォーダブル住宅)」と呼んでいます。
GAFAの住宅関連の計画としてはまず、
アマゾン社は今年1月のリリースによると20億ドルを投資し、
「住宅エクイティファンド」を立ち上げる予定です。
本社が所在するワシントン州シアトルや
バージニア州アーリントン、テネシー州ナッシュビルの
3エリアを対象に、合計2万戸以上を供給する計画です。
20億ドルで2万戸超の供給数ですので、
コストは1戸あたり10万ドル未満と推計されます。
アマゾン社以外では、アップル社は2019年11月、
カリフォルニア州を中心に25億ドルを投資すると発表しました。
また、フェイスブック社は同年10月、
10億ドルを投じると発表しています。
さらにグーグル社も同年6月、
ハイテク産業が集まるサンフランシスコのベイエリアに
10年間で合計10億ドルを投資すると明らかにしています。
(情報提供:住宅産業研究所)