「ハウスメーカーの中期経営計画」市場動向
コロナの影響で先行きを見通すのが難しい市場環境ですが、3月決算期の決算発表と
前後して、積水ハウス、積水化学、プライムライフテクノロジーズが中期経営計画を
発表しました。
大和ハウスと住友林業も2022年度を最終年度とする中期経営計画をすでに発表して
いましたが、コロナの影響を加味した下方修正も検討されるでしょう。
ハウスメーカー各社の中期経営計画の内容からは、住宅市場全体が進む大まかな方向性が
読み取れるでしょう。
ストック事業の本格化
住宅市場は中長期的に縮小していくことは間違いなく、新築戸建を主力事業として
業績を拡大していくことは厳しいと見ているハウスメーカーが大半です。
そこで注力していくのが、住宅を建てる・売るだけのフロー型ではなく、自社ストックを
活かすリフォーム、一般ストックを活かす不動産流通、自社保有物件の資産運用や
管理サービスといった、ストック型の事業です。
積水ハウスの中期経営計画において、2022年度までに最も売上増を大きく見込んでいるのが
リフォーム事業で13.8%増、次いで不動産フィービジネスの13.1%を計画しています。
営業利益の計画も、全体で7.2%の増益を計画している中で、
ストック型事業は25.6%の増益、請負型事業は7.8%の増益の計画で、ストック型事業への
期待値が高いことが窺えます。
積水化学では、リフォーム事業単体では3.1%増収と控えめな計画ですが、賃貸管理・仲介、
中古買取再販も含めたストック不動産事業で27.5%の増収を計画しています。
リフォームと不動産を融合させてストックを最大活用する方向性を目指しています。
非住宅ビジネスへの注力
新築の請負事業は戸建住宅に留まらず、ハウスメーカー各社ではここ数年でゼネコンとの
連携を進め、非住宅の請負を強化してきています。
積水ハウスでは前期の途中から、鴻池組を傘下に持つ鳳ホールディングスを連結子会社化
したことで、請負型事業のセグメントに、新たに建築・土木事業を組み入れました。
請負型事業の中で、戸建・賃貸・建築をほぼ3等分で手掛けていくイメージで、
減少する戸建をカバーする計画です。
ハウスメーカーの中でも総売上に占める非住宅の比重が最も大きいのが大和ハウスです。
中期経営計画では、商業施設で15%、事業施設で11%増収し、この2事業で2021年度の
売上は2兆円を計画しています。
今年6月には、中期経営計画の中の不動産投資計画の変更を発表しました。
事業施設事業への投資額を3,500億円から6,500億円に増やすということです。
以前からWEBショッピングの普及によって宅配の需要が増えてきていますが、コロナ以降は
宅配がより増加し、物流施設の成長性は高いことが予測されるため、大和ハウスの
投資計画はこの流れに合致すると言えるでしょう。
街づくりの推進
単なる大型分譲地の開発ではなく、商業施設や医療関連施設、IoTやモビリティを
組み合わせたスマートシティの開発は、社会貢献度も高い大手住宅会社の役割の一つと
言えるでしょう。トヨタ、ミサワ、パナの3社が、各社の強みを合わせた街づくりでの
連携を目指して誕生したのが、プライムライフテクノロジーズです。
中期経営計画では、19年度1,003億円の街づくり事業売上を、2022年度には約2割増の
1,200億円まで伸ばす計画です。
そのために、各社が保有する大型分譲地を共同プロジェクトとする方針です。
すでに進められているプロジェクトもあり、2030年に向けた中長期戦略では、
ストック事業と連携した資産循環型のビジネスモデルの確立を目指すことが示されています。
住宅市場は縮小に向かいますが、ハウスメーカーが新築戸建以外の事業へのシフトを
進めるとすれば、中小のビルダー・工務店こそが地域の住宅市場を支える企業としての
存在感を示せるかもしれません。
(情報提供:住宅産業研究所)