「大手ビルダーの直近四半期決算動向」市場動向
新型コロナウイルスの感染拡大の脅威は未だ衰えず、
各業界が様々な形でその影響を受けています。
観光関連業や飲食業の一部では、2020年度決算で減収減益や大幅な赤字転落となることが
予測されます。
テレワークの浸透により事務機器関連企業の決算も厳しいでしょう。
逆にDX関連や医薬品、巣籠消費で需要が高まった食品関連企業の一部では、
第Ⅰ四半期決算において過去最高益を出した企業も少なくありません。
大打撃を受けた企業と、コロナを追い風として業績好調という企業とが、完全に
二極化していると言えます。
住宅業界へのコロナの影響も、総合展示場の集客減少によって受注を大きく減らしている
企業と、WEBで物件情報を検索して購入を判断しやすい建売分譲を主力とする企業とで、
今期の業績は二極化するものと見られます。
3月決算の住宅会社では8月頃から第Ⅰ四半期の決算が発表されています。
大手ハウスメーカーでは前年度からの受注残もあり、第Ⅰ四半期の時点では
増収増益を維持している会社が少なくありません。
コロナの影響が決算に影響してくるのは、第Ⅱ四半期以降ということでしょう。
大手ビルダー各社の直近で発表されている決算を少し細かく見て行きましょう。
飯田グループホールディングス
分譲住宅最大手の飯田グループホールディングスの、2021年3月期第Ⅰ四半期決算は、
売上高3,220億円(前年同期比7.6%増)、営業利益157億円(22.2%減)の
増収減益となりました。
同社では増収要因として、コロナによる在宅時間の増加で戸建住宅の需要が高まったと
分析しています。
グループの物件サイト「すまいーだ」のアクセス数は前年同期比81%増と急増し、
第Ⅰ四半期の販売棟数は8.7%増の10,749棟となりました。
リフォームとオプション工事の売上も年々増加しており、
前年同期比で9.8%増加しました。
一方、減益要因は在庫の圧縮によるものです。
昨年末の時点で32,231棟を抱えていた未契約在庫数を今年6月末時点では26,265棟まで
減らし、完成在庫に占める長期在庫の割合も減少しています。
オープンハウスグループ
オープンハウスグループの決算月は9月なので、現在発表されている最新の情報は、
2020年9月期の第Ⅲ四半期決算です。
売上高3,835億円 (4.6%増)、経常利益 532億円 (56.1%増)と、
第Ⅲ四半期として過去最高の売上高・利益を更新し、通期の業績予想としては
8期連続で過去最高の売上高・利益の更新を見込んでいます。
月次の仲介契約件数も、今年5月は前年比43.0%増、6月は52.3%増、
7月は55.5%増と好調に推移しています。
コロナ以降は新しい生活様式として、帰宅後すぐの手洗い動線、収納スペースの充実、
在宅勤務時のワークスペース等の提案を行っています。
また、オンラインチラシ自動作成システムを運用して業務効率を高めることで、
利益率も向上することが予想されます。
ケイアイスター不動産
ケイアイスター不動産の2021年3月期第Ⅰ四半期決算は、
売上高281億円(前年同期比8.2%増)、経常利益9.3億円(24.3%減)の増収減益と
なりました。
減益要因は事業拡大に伴う人件費の増加による販管費の増加、土地取得資金の調達に
伴う支払利息で営業外費用が増加したこと等です。
コロナ以降は、不測の事態で住宅ローンの支払いが困難になった購入者にお見舞金を
支給する「お住まいレスキュー」、コロナの影響で休業や離職となった主婦や学生向けに、
短時間のアルバイトを斡旋する「近キョリワーク」の人員拡大等、地域や顧客に貢献する
施策を実施しました。
注文住宅事業では、展示場に無人内覧システムとチャットボットを活用した
非接触型営業を導入するなど、新しい取組を行っています。
ヒノキヤグループ
12月決算のヒノキヤグループは、2020年12月期の第Ⅱ四半期決算を発表しています。
売上高476億円(前年同期比4.6%減)、経常利益12億円(36.7%増)の減収増益と
なりました。
消費増税の反動減により、受注残が少なかったため、引き渡し件数が減少したことが
主な減収要因です。
4月・5月に展示場集客が減少したため、5月・6月の受注は前年割れとなりましたが、
7月はWEB反響の増加等により前年同月比29%増とプラスに転じています。
9月8日に、ヤマダ電機がヒノキヤグループをTOBで子会社化する方針を発表しました。
ヒノキヤの上場は維持され、経営陣もそのまま残るということですが、
ヤマダとのグループシナジーが今後どのように活かされるかが注目されます。
(情報提供:住宅産業研究所)