世相を映す住宅会社の商品開発市場動向
新型コロナウイルス感染拡大によって、住宅業界では集客や接客における対応策に留まらず、感染リスクを低減する住まいの提案も見られるようになりました。そのほか在宅ワークや子どもの家庭学習を支援する住まいの提案も注目も浴びています。
家族の健康な暮らしを守る住宅
熊本県のビルダーであるLib Workでは、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、“抗ウイルス”仕様の戸建住宅商品を4月4日に発売しました。同社が発売した「sumica(スミカ)」は、ウイルスや菌への不安を低減し、家族と健康的な暮らしをしてほしいというコンセプトで、内装材に抗ウイルス性の素材を使った住宅商品です。フローリングや壁・天井のクロスには、付着したウイルスや菌を分解、不活化する働きを持つ成分が含まれています。
例えば、床にはウイルスを水や炭酸ガスに分解する「可視光型光触媒」の働きを持った床材を使用しています。これは、蛍光灯等の室内照明が床に当たることで触媒作用が働き、付着したウイルスを分解・除去するというものです。また、壁や天井のクロスの表面にウイルスが付着すると、抗ウイルス性の成分が、ウイルス表層のタンパク質を変性・破壊し、有機成分を分解することで、ウイルスを不活化する効果があるということです。さらに、細菌の繁殖を制御する働きもあるため、食中毒等から小さな子供を守る効果も期待できます。同社では、新商品発表会の開催のほか、各モデルハウスや営業店舗において、“抗ウイルス住宅”「スミカ」の取扱い・販売を行っていくということです。
仕事と暮らしを両立させる住宅提案
緊急事態宣言以降、現在多くの企業が従業員のテレワーク等を導入しています。また、近年の働き方改革の推進により、テレワークの他にもフリーランスや副業等、自宅で仕事をする人も多く、働き方の多様化が進んでいます。リコーとコスモスイニシアでは、自宅で仕事をする人向けに、2つのアイデアを取り入れたリノベマンションを開発しています。1つ目のアイデアは「家の中にこもれる空間がある」をコンセプトにした「コモリワーク」スペースです。リビング・ダイニングにつながる洋室に、家族との距離感を保ちながら、集中できる作業スペースを設けています。小上がりにして視点を高くすることで室内や窓の外の様子を眺められ、仕事とプライベートの空間を適度に区切ることができます。
2つ目のアイデアは、「家の中に外がある」をコンセプトにした「ドマワーク」スペースです。玄関と一体となる土間のような空間を設け、住まいの中の仕事場を作っています。リビングの扉を境に床の素材を切り変え、「住まい」と「仕事場」の境界を演出します。また、「ドマワーク」とキッチンの間に窓を設け、「住まい」とも緩やかなつながりを持たせることで、仕事以外の空気を感じて気分転換を図ることもできるということです。両社は今後、共同で開発したアイデアを他事業へのサービスに展開する等、新たな価値を創出して社会や市場に提案していくということです。
変化する学校教育と住宅商品
埼玉県に本社を置くケイアイスター不動産では2018年より、デジタル技術を用いて子供の家庭学習を支援する「子どもの頭が良くなるKEIAIの家(仮称)」の開発プロジェクトを推進しています。2020年4月から、小学校では英語とプログラミング教育が必修化される等、学校教育が大きく変化しています。そこで、子供の学力を上げる目的や、学習の習慣化を身に付けさせるために家庭学習が重要視されています。同プロジェクトは、教育の専門家やデジタル教材プロバイダーの協力のもと、IoTとタブレット端末、その上で動作するアプリからなる学習支援システムを開発し、住宅に搭載するというものです。
現在開発中の住宅では、様々な学習用の仕掛けが採用されており、例えばトイレのドアを開けようとする時に学習支援システムが問題を出題することで、普段の生活をしながら学習を積み重ねることができるほか、AIによる学習の進み具合の管理等のサポートを受けることができます。同社では、2020年後半以降に、「頭が良くなる家」のコンセプトを実現した製品・サービスを同社が提供する住宅に実装し、販売することを目指しています。
(情報提供:住宅産業研究所)