レジリエンス提案進める住宅会社市場動向
これまでレジリエンスをテーマとする住宅商品の開発は、ビルダーや工務店よりハードの開発を得意とするハウスメーカーの方が積極的でした。しかしながら、全国的に自然災害の発生頻度が高まっている近年の状況を考慮すると、このような事態を想定した住宅提案を工務店も講じるべきと言えます。
2019年夏に関東地方、特に千葉県で大きな爪痕を残した台風15号の時には、この影響で1ヶ月以上電力などのインフラが滞ったという地域もありました。亜熱帯化している国内の気候を考慮すると、これからもこのような自然災害が発生する可能性は高く、レジリエンス商材の需要は高まっていくでしょう。
一条工務店「電力革命」で巻き返すか
一条工務店が取り組み始めた新戦略は「電力革命」です。同社はこれまで「家は性能」をキーフレーズに全国戸建棟数№1を達成し、10%への消費増税前は受注も好調だった一社ですが、2019年度に突入してからは受注苦戦が続いているようです。巻き返しのアイテムとして用意したのが、太陽光と蓄電池をセットで搭載した住宅提案です。
電力革命と称してPVシステムは自社商品、蓄電池に関してはOEMで製造したものを提供しています。同社は、従来からPVシステムの搭載率は90%を超える実績があり、ZEH比率も2018年度70%超と積水ハウスに次ぐ割合を達成しています。19年末には特別価格キャンペーンとして、PVシステム13.75kWを1kW当たり16.8万円(税抜)で販売しました。この価格には7.04kWhの蓄電池が付いてくるということで、エンドユーザーにとって大変お得なキャンペーンだったと言えます。
この蓄電池の特長の一つは寿命の長さで、同社調べで一般的な蓄電池の2倍の約30年間とのことです。これはリン酸鉄リチウムイオン電池を利用していることが要因で、12,000回の充放電が可能としています。このPVシステムと蓄電池を導入することで、停電時に最大5.5kVAを家中に供給し、家電や照明などを普段通り使用できるとのことです。
製水器、耐震シェルターの提案も
ヤマダホームズでは19年度、レジリエンスをコンセプトとする商品「NEXIS\ネクシス」を発売しました。新築住宅だけでなくリフォームにおいても同様の仕様を導入できるため、昨今全国的に発生している異常気象を鑑みると今後需要が高まる可能性が高い商品と言えます。NEXISは「電気・水・身の安全」に焦点を当て、ライフラインが滞った時に電力、水が不足するという居住者の不安を取り除き、住宅の一部をシェルター化することにより外部の衝撃から居住者を守ることを目的としています。
電力に関するソリューションとしては、グループ会社であるヤマダトレーディングと共同開発したオフグリッド蓄電池を用意しました。特筆すべきはコスパの高さで、10kWhの容量で材工含めて120~130万円を実現しています。1kWh当たり12~13万円は国内に流通する家庭用蓄電池の中でも安価で、競争力が高い製品です。また、オフグリッド性能を有し、電力会社と電源がつながっていない状態でも家電を使用することができるなどの特長もあります。PVシステムを5kW以上搭載している住宅であれば、理論値上電力自給自足の生活が可能とのことです。新築部門では発売した19年度だけで100件以上の問い合わせがあり、リフォーム事業部でもこの蓄電池を卒FITオーナーに向けて訴求しています。今後増えていく卒FITオーナーを考慮すると、引き合いもその分増えていくでしょう。
水の確保に関しては専用の整水機が活躍します。花粉やPM2.5を取り除く高性能のHEPAフィルターで、空気中の埃や塵などをブロックして空気を浄化し、その綺麗な空気を使用して飲料水を1日当たり16~26リットル生成するとのことです。さらに、三層のろ過装置、電気分解殺菌装置などを通過することで安全安心な水を提供でき、断水時にも水不足の問題解消につながります。
NEXISの3つ目の提案は住宅のシェルター化です。住宅の中に設置できる4畳半サイズの耐震シェルターを開発しました。自社で行った圧縮耐荷重試験では、2階建木造住宅の約3棟分に相当する100トンの耐荷重環境でも、9mm以下の歪みに留まったということで耐久性の高さが窺えます。構造部材に「SxL構法」で使用している木質接着パネルを使用することで、このシェルター化は新築においても、リフォームにおいても可能とのことです。
(情報提供:住宅産業研究所)