FIT終了ユーザーの次の一手は?市場動向
余剰電力買取制度(FIT)がスタートしてから、2019年11月で10年を迎えました。資源エネルギー庁の発表によると19年11月と12月の2ヶ月間だけでFIT買取期間満了を迎えるユーザーは、全国53万件とのことです。2020年以降も20万件以上が順次満了となり、2023年には165万件に上ります。これらのユーザーはFIT終了後、どのように電力を運用していくかが課題と言えます。
FIT終了ユーザーが採る対応は2つに大別されるでしょう。1つは民間事業者による電力買取制度の活用、もう1つは蓄電池を設置して、発電した電力を自宅で活用することです。この2つを組み合わせることもあるでしょう。
ハウスメーカー独自の電力買取制度始まる
ハウスメーカーは2019年、相次いで独自の電力買取制度を発表しました。ハウスメーカーの電力買取制度は基本的にはオーナーを対象とするサービスであり、電力会社が発表したFIT終了ユーザー向け電力買取単価よりも高い傾向にあります。この価格設定は、各社の電力買取制度がOB客とのリレーション強化策の1つであることに起因します。オーナーとの接点はこれまでアフターメンテやリフォームが中心でしたが、1年間顔を合わせないこともあり、リレーションが希薄となりやすいという実情がありました。反面、電力買取制度を活用すれば、オーナーにとっては常に会社との接点を感じられ、企業は住宅に関する相談事などを捕捉できる可能性が高まるでしょう。
また、各社買取制度の特徴の一つは、蓄電池を設置しているオーナーの買取単価が蓄電池を設置していない場合よりも高いことです。ユーザーにとっては、蓄電池を設置した方が稼げるように見えますが、自宅で消費する電力量を差し引くと売電量が減るため、売電金額が大きく増えるということはなさそうです。今回はハウスメーカー数社を取り上げて、その制度概要を紹介します。
まず、積水化学の「スマートハイムでんき」は買取単価9円、蓄電池を所有するオーナーは12円です。同社は太陽光発電搭載累計件数でギネスを獲得するなど、太陽光発電システムの販売に注力してきた企業であり、ハウスメーカーの中でも卒FITオーナーは最多で、2019年だけで6万件に上ります。
大和の「ダイワハウスでんき」は、同社が推進するリブネス事業の一環でもあります。特徴は大和オーナーでなくとも契約できる点です。しかしながら、一般客の買取単価は大和オーナーよりも1.5円安く、10円に設定しています。とはいえ、多くの電力会社が買取単価を9円台に設定していることから、単価競争力があります。「ダイワハウスでんき」を通じて一般ストック市場開拓の足掛かりとなるでしょう。
パナソニックの買取制度「エネPlus」はパナソニックホームズオーナーでなく、20年12月までにFIT満了を迎える、かつ20年12月までにパナソニック製蓄電池、エコキュート、AiSEG2などを購入するユーザーを対象としています。電力買取単価は13~16円と幅を持たせ、16円に該当する条件はNTTスマイルエナジーが開発した「ちくでんエコめがね」を導入することです。これはオーナーの電力消費パターンの予測や天候・気温データを活用し、蓄電池のAI制御を行うシステムで、電気料金削減や災害対策に役立てることができるとのことです。
FIT終了を機に電力の有効活用、蓄電池の需要高まるか
卒FITオーナーの中でニーズが高まっているのは蓄電池でしょう。ここ数年は自然災害が多発しており、住宅会社としても改めてレジリエンスとしての蓄電池活用を訴求したいところです。まだまだ蓄電池は高価な住宅設備ですが、電力は10円内外で売却するよりも自宅で消費する方が得となりやすい今、蓄電池の訴求力は高いと言えます。
ハウスメーカーでは積水化学が蓄電池販売を促進しています。2018年度は推計2,000台の受注、19年9月には単月500棟の受注があったとのことです。次点で蓄電池販売が進んでいるのはおそらく旭化成リフォームで、18年度推計900台を受注しました。特に京セラ製12kWhの大容量蓄電池が選ばれやすいとのことでした。
国内メーカー産の蓄電池が多い中、海外メーカーの蓄電池として注目されるのは自動車メーカーテスラ社が開発した蓄電池「パワーウォール」です。2020年4月に国内発売を予定しています。特徴は価格の安さであり、13.5kWh・99万円、1kWh当たりの価格に換算すると7.3万円です。日本国内で市販されている蓄電池が1kWh当たり20万円以上であることを踏まえると、価格競争力の高さが窺えます。また、出力W数は5kWで、家庭の契約電流50Aに相当するとのことです。つまり、一度に多くの電化製品を動かすことができる性能を有しています。
(情報提供:住宅産業研究所)