増える空き家~地方で空き家再販業者が登場~市場動向
住宅土地統計調査から探る住宅ストックの実態
総務省は9月末、2018年に実施した住宅土地統計調査(以下、住調)の基本集計結果を発表しました。国内の総住宅数は6,240万戸、総世帯数は5,400万世帯に達しており、前回の2013年調査と比較すると、総住宅数は2.9%増、総世帯数は3.0%増加しました。空き家数は2013年から3.6%増の849万戸となりました。
空き家率ということでは2013年から0.1%上昇して13.6%と、過去最高の数値となっています。空き家の内訳を見ると「賃貸用の住宅」が432万戸、「売却用の住宅」が29万戸、別荘などの「二次的住宅」が38万戸、放置されている可能性のある「その他の住宅」が348万戸です。増加率ということでは「その他の住宅」が、2013年から9.5%増と急増しています。
空き家率を都道府県別で見てみると、最高が山梨県の21.3%、次点が、和歌山県で20.3%となっています。両県は従来より空き家率の高い県ではありましたが、2018年調査で初めて空き家率20%を超えました。一方、空き家率が低いエリアということでは東京、沖縄、埼玉がそれぞれ10.6%、10.2%、10.2%で、初めて全都道府県の空き家率が10%以上となりました。また、東京23区でも空き家率10.4%、大阪市17.1%、名古屋市12.7%と、都市部においても空き家問題が深刻化している状況が伺えます。2013年の調査によると、東名阪の3大都市圏には高齢者だけが住む持家(戸建及びマンション)が330万戸あり、同圏内の持家全体の2割強を占めます。家主の死後は空き家となるケースが多く、古い家屋は買い手がつくにくいこともあり、ストックの循環促進策は急務と言える状況です。
地方で成長する買取再販事業者
地方で活躍する買取再販業者と言えば、カチタスが筆頭ですが、地元エリアで買取再販を展開する業者も徐々に増えています。今回取り上げるのは福井の「グラストエステートパートナーズジャパン」です。北陸地方の空き家比率は、石川14.5%、福井13.8%と、全国平均13.6%を超えており、富山でも13.2%と高い水準にあります。また、以前から持ち家率が高いことが特徴です。グラストエステートパートナーズジャパンはこれまで、「住まいと生活のトータルサポート」企業を掲げ、年間50件超の住宅リフォーム・リノベーション事業を中心に、集合住宅の定期清掃・メンテナンス、そしてエンドユーザーの生活全般をサポートする便利屋事業(「あっと便利」事業部)など、多様なサービス事業を展開してきました。同社が空き家を買い取りリフォームして再販する事業を始めたのは2018年。販売実績はまだ多くありませんが、これまで培ってきたリフォーム経験を生かし、「まいほむ」というブランド名で中古再販事業を展開しています。
この事業モデルは「年収350万円でも賃貸より安く自分の家を持てる」ことで、基本的にはキッチンやリビングなど部位を絞ってリフォーム工事をしています。販売価格は郊外の2階建戸建住宅で1,000万~2,000万円が中心で、月々のローンの支払額を賃貸の家賃並みに抑えています。物件によっては、リフォームする際に壁を壊して広いリビングにしてホームシアターをつけるなどで付加価値をつけるケースもあるとのことです。2019年7月に福井市内の第1号物件を売却し、この10月時点では3件目のリフォームが着工したところです。エンドユーザーからの中古物件の相談が増えており、近い将来、年間10件程度の販売を目標としています。「まいほむ」が売り手にとって魅力的な点は、まず、買取までのスピードです。現地査定後、最短5営業日で見積を提示し、最短4週間で現金決済で対応しています。また、空き家や古い物件においてもリノベーションを前提とした査定を行っているため、優良な金額で買い取ることが可能です。最近では物件売却に関するエンドユーザーからの相談も増えており、ここからの買取件数も比例して増やしていく予定です。
(情報提供:住宅産業研究所)