工務店による地域連携のコラボ事例集客・マーケティング
前回は、住宅会社と地方自治体やメディアといった異業種とコラボした住宅業界の事例をご紹介しました。今回は、一見するとライバル関係とも言える住宅会社同士がコラボした住宅業界の事例をご紹介します。
地域工務店が連携する期間限定の住宅展示場
岡山県下に本社を置く地域工務店・ビルダー8社による期間限定の住宅展示場「OKAYAMA HOUSE DESIGN EXPO2019」が、4月13日から6月30日まで倉敷市福田町古新田地内において開催されました。開催期間が終了した7月以降は、モデルハウスとして利用されていた建物と、建売モデル以外の8区画が出展社の建築条件付きの売り建てとして実際に販売されています。各社のモデルハウスは、初めから建売住宅として販売され、実際に入居する人がいるということを想定して建築されています。そのため、一般的な総合住宅展示場のように「魅せる」ための仕様ではなく、日常の暮らしをイメージした「住む」ためのリアルな間取りで設計されました。
岡山県内において、このような住宅会社がコラボした展示場の取組みは、2014年10月から15年3月に岡山市内で開催されたものに続いて2回目ということです。今回の会場では、約2,499平米の敷地面積に1区画あたり約135~184平米に区分された14区画が構成されました。参加した8社は、「アイムの家」、「イシンホーム」、「イチマルホ-ム」、「木の城いちばん」、「倉敷ハウジング」、「ヘルシーホーム」、「ミナモト建築工房」、「小川健美」で、いずれも岡山県内で実績のある地場ビルダーです。ハウスメーカーと比べて会社規模の小さい工務店やビルダーでは、広告宣伝にかけられる予算も限られます。地域の会社が連携して一つのプロジェクトとして実施することで、全体として規模の大きな広告宣伝を行うことができ、多くの集客を見込むことができます。
また、ユーザーとしても地域に特化した住宅会社を知る機会が増えることに加え、実際に住むことができるリアルサイズで手ごろな価格の物件を一度に見学することできるというメリットがあります。今回の「OKAYAMA HOUSE DESIGN EXPO2019」においては、2か月半という会期中に約950組の来場客を集客できたということです。
21社が参加する地元の木を使った家づくり
2016年に神戸で開催され話題を呼んだ「里山住宅博in神戸」に続いて、今年6~11月に関東圏としては初めて開催されているのが「里山住宅博inつくば」です。里山住宅博は、これからの積極的な郊外住居のあり方を示す住宅博として注目されています。「里山住宅博inつくば」は、土地を取得したサンヨーホーム、地域木材の地産地消を推進する茨城県産材普及促進協議会が主催者となり、参加する地域工務店21社による実行委員会により運営されています。
博覧会会場街区は、約2万5,000平米という広大なエリアに、地域工務店21社が23棟のモデルハウスを建築しています。23棟のモデルハウス全てが茨城県産の木材を使って建てられています。街区全体が完成すると、75棟の地元の木を使った木造住宅が建ち並び、里山に囲まれた郊外型の田園住宅街になります。ユーザーは、博覧会会場で気に入った住宅会社のモデルハウスを購入するか、モデルハウス以外の建築条件付きの土地を購入し、出展する21社の地域工務店の中から気に入った1社を選び、注文住宅の建設を依頼することができます。
街区には里山斜面部分の他に、広大な「コモン」と呼ぶ共用の庭・広場が置かれ、里山と共にその1万㎡を超える土地は、居住者の持分に応じた共用スペースになるということです。この共用部の管理・整備には各住戸の入居者が支払う共益費が使われます。専門の造園会社による指導のもと周辺農家が携わり、時には住民も参加して行なうということです。夏にはプロと農家による指導のもとに住民同士で里山を手入れし、秋には果実の収穫体験を行なう等、入居家族同士の交流が盛んに行われるような、地域コミュニティの形成にも注力しています。現在は、里山の周辺環境を知るためのバスツアーや、夜間の分譲地内を体感することができるナイター営業、里山キャンプ体験等のイベントを開催し、集客、モデルハウス棟の販売を行っているということです。
(情報提供:住宅産業研究所)