ビルダーもグループ化・多角化で成長描く市場動向
前回は、大手ハウスメーカー同士の経営統合や、ゼネコンや海外法人とのグループ化によって、事業領域を拡大している事例をご紹介しました。ビルダーも経営統合やM&Aによる巨大グループ化が進んできています。平成最大の経営統合と言えるのが、グループ企業6社を統合した飯田グループの誕生でしょう。
一建設の傘下には、神奈川No.1地元ビルダーの「住宅情報館」が加わっており、「飯田産業」はFC大手の「ユニバーサルホーム」を子会社化しています。グループの年商は1兆円、販売棟数は40,000棟を超え、大手ハウスメーカーに匹敵する最大規模の住宅企業グループと言えるでしょう。
分譲大手のM&A戦略…「オープンハウス」、「ケイアイスター」
最大手の飯田グループを追いかけるビルダーが、オープンハウスグループです。「アサカワホーム」(現オープンハウス・アーキテクト)、「ホーク・ワン」という大手ビルダーを傘下に収め、年商は5,000億円を超えてきます。「オープンハウス・ディベロップメント」では、東京23区内で新築分譲マンションよりも買いやすい価格帯の狭小建売戸建を供給して棟数を伸ばし、名古屋と福岡にも進出しています。「オープンハウス・アーキテクト」とは分譲と請負、「ホーク・ワン」とは都市部と郊外で棲み分け、グループ各社で業績を伸ばしています。収益不動産、投資用の海外不動産でも約260億円を売り上げており、住宅事業でまだ未進出のエリアも多く、今後もM&Aでグループの規模を拡大してきそうです。
大手ビルダーのここ数年の売上の伸びを見ると、「オープンハウス」に匹敵する勢いで伸ばしているのが「ケイアイスター不動産」です。グループ連結から3期連続の増収増益で、19/3期グループ連結決算では前期比60.9%増収、連結売上高1,000億円を突破しました。埼玉県北部を中心に北関東~首都圏で主に建売を展開する「ケイアイスター不動産」本体では、分譲住宅事業の売上が49.5%増。提携不動産業者を組織化して、用地の仕入れ・販売を強化したことが奏功し、販売棟数は3,000棟に迫っています。グループ会社では、2016年に子会社化した「よかタウン」が62.3%の増収、17年に子会社化した「旭ハウジング」の売上は約3倍になりました。さらに千葉の「フレスコ」、神奈川の「建新」といった中小ビルダーもM&Aでグループに加え、首都圏の未進出エリアを開拓しています。
M&Aによるグループ拡大以外には、ITの戦略的導入による業務効率化、海外不動産投資事業、IoT家具メーカーとの業務提携等を進め、先進的な取組に挑戦しているビルダーの一つと言えます。
注文ビルダーでは「ヒノキヤ」が筆頭、中堅ビルダーも異業種開拓
注文住宅を主力とするビルダーでは、「ヒノキヤグループ」がM&Aによって拡大してきた最大手ビルダーと言えるでしょう。大きなところで言うと、2011年に神奈川の「三栄ハウス」(現桧家住宅)、14年に新潟の「北都ハウス工業」(現パパまるハウス)、16年に「レスコハウス」(現ヒノキヤレスコ)を子会社化し、18/12期はグループ計4,000棟弱という規模まで拡大しています。09年に子会社化した「日本アクア」の断熱材事業の売上は200億円弱で、同社単体でも株式上場しています。「ヒノキヤグループ」は、介護施設や保育施設、宿泊施設等の事業にも進出しており、今後もM&Aによって新規事業の開拓を進めると見られます。
住宅会社に限らず、日本企業のM&Aは増加を続けており、M&A仲介会社等の調べによると、2018年度のM&A件数・金額は過去最高を更新しました。海外企業を対象とした大型案件も多いですが、国内企業同士のM&Aも増えているそうです。住宅業界では、中小工務店の経営者の高齢化による事業承継問題をきっかけに、中堅ビルダーが同業他社を子会社化するケースも増えてきました。この8月には、中古マンション買取再販大手の「ホームネット」が、山口県の「ファーストホーム」と秋田県の「サンコーホーム」という県内トップクラスのビルダー2社をグループ傘下に加えました。住宅会社同士、住宅関連事業者が絡んだM&Aによるグループ化の動きは、今後も頻出しそうです。
(情報提供:住宅産業研究所)