人手不足で現場も変わるハウスメーカー
前回は今年4月に施行された働き方改革関連法案や、住宅会社の営業現場における新たな取組みについてご紹介しました。今回は、近年では人材不足等も懸念される職人の問題や建設現場について、住宅会社の取組みをご紹介します。
職人不足を防ぐ取り組み
積水化学工業住宅カンパニーグループの東京セキスイハイム施工では、住宅の内装等を手掛ける大工の高齢化対策として、新人大工向けの訓練計画を作成しています。現在、建設の現場では、職人の高齢化や、仕事の大変さから若い職人がなかなか定着しないといった問題を抱えています。また、仕事のやり方についても実際の現場で先輩職人の近くで見ながら覚えるということも多く、技術の修得が難しいということもあります。同社では、基礎研修や工具の使い方等について、1年半の指導計画を立案し、訓練の機会を得にくい若手の職人をしっかりと育成することを目指しています。また、現場の職人の中には、若手への指導方法が分からないといった問題もあるということで、訓練計画を作成することで、若手、ベテラン双方の不安の解消につながっているということです。
現場の負担を減らす新技術
積水ハウスでは、定期点検の現場における作業員の負担軽減に取り組んでいます。同社は、ドローンやロボットといった最新技術を活用した戸建住宅の定期点検手法「スマートインスペクション」を8月より開始すると発表しています。スマートインスペクションでは、屋根の点検にはドローン、床下にはロボット、小屋裏にはロボットカメラが使われるということです。従来、屋根の点検は、重量のある高所用カメラが使われていました。また、床下や小屋裏の点検についても、狭所や高温の空間という問題があり、点検作業員の負担は大きいとされています。
積水ハウスが新たに行うスマートインスペクションでは、屋根の点検は社員に配布しているiPadを使ってドローンを操作し、屋根全体や外壁の撮影を行います。床下点検においてもiPadで床下点検用ロボット操作しながら、ロボットに設置されたカメラで床下の様子を撮影することができます。小屋裏は脚立に上らずロッドの先端に装着したデジタルカメラをiPhoneで操作して撮影します。撮影した画像はクラウドを介してチェック専門の部署に送信され、問題が発見された場合には、後日作業員による再検査が行われるということです。また、画像チェック後には点検報告書を即時作成し、現場の作業員のiPadに送信することで、その場でユーザーに結果を説明することも可能となります。これらの取組みにより、従来は2人の作業員が4時間かけて行っていた点検を、1人の作業員が1時間45分で完了することができるということです。同社では、スマートインスペクションが高齢者や女性の活躍機会にもつながり、人手不足が解消できると期待しています。
アパート大手の大東建託では、施工現場の人手不足への対応と、労働災害対策としてビス留めロボット「デービス」の開発を進めています。デービスは賃貸用住宅等の小規模な建築現場において、釘打ち機によるビス留め作業を行います。同社オリジナルの現場管理システムで制御し、設定されたプログラムに沿って自動でビスを打ち込んでいくというものです。施工現場での労働災害では、大工の被災が多く、中でも釘打ち機の誤発や跳ね返りによるケガが多いということです。デービスを導入することで、作業負荷が高く、さらに危険な作業を人が行わずに済み、安全性の向上と作業負荷の低減を実現することができます。危険な作業をロボットに肩代わりしてもらうことで、空いた職人の手を他の専門性の高い作業へと振り分けることもできます。また、デービスは分解して持ち運ぶことも容易にできるということで、施工現場毎に簡単に設置することも利点となっています。大東建託では今後、デービスのより軽量化を図っていくとともに、2020年12月の本格導入を目指し、施工現場での実証実験を継続していくということです。
(情報提供:住宅産業研究所)