工事現場の管理方法は変化の時代へ市場動向
(1)現場のIT化進む、監督の現場巡回数減少
IT化と共に現場管理の方法が大きく変化しようとしています。建設業界に関しては他業界よりもIT対応が遅れていると言われており、最近ではBIMやIoTといった単語がようやく散見されるようになった段階です。
建設業界の中でも住宅業界に関しては業務手法において属人的な側面が強く、世の中が人材不足、働き方改革、生産性向上に向けて舵取りする中で、ますますIT技術の導入が重要となっています。住宅会社の中で広く使われているのは、工事管理関連のITツールです。また、大手ハウスメーカーよりも地元のビルダーの方が駆使しているかもしれません。全国で水平展開しているハウスメーカーでは浸透させるまでに時間を要し、小回りの利くビルダーの方がイニシアチブを持って利用できているということでしょう。
代表的なITツールとしては、オプトが開発した「アンドパッド」が挙げられます。2016年にサービスがスタートし、新築やリフォーム、非住宅の建設現場を含め、施工会社と職方の間で行われるやり取りをスマホで効率化できることが特徴で、導入社数は1,600社を突破しました。これまでの常識だったFAXや紙媒体ではなく、スマホで簡易に施工内容を入力でき、チャットを活用することで監督と職方のコミュニケーションも取りやすくなっています。現場の写真などをアップすれば現場の進捗を遠隔で確認でき、現場巡回数の削減から業務効率化につながります。さらに、タイムカードとして活用することも可能で、職方の労務管理も可能です。また、工事中だけでなく、引き渡し以降の顧客情報の管理もできるため、アンドパッドがあれば契約前からアフターまでを一元化することができます。
工事監督は個人によってやり方が大きく変わることが多い職種です。工事現場の巡回回数が多い監督や少ない監督、職方とのやり取りが電話の監督やメールを使用する監督、現場指示をFAXでする監督など、業務手法が異なるため、年間管理棟数のムラが監督間で発生していました。このようなITツールの導入に至っては、改めて工事監督の業務ルールを整理するきっかけにもなります。工事管理ツールはあくまで「道具」であり、その「道具」を使う人の意識やルールから変えることが重要です。人材不足がさらに深刻化していく状況で、年間完工棟数の増加を計画した際、工事監督が足りていないということで人を増やすのか、効率を上げるのか、どのような判断を下すかがこれからの生き残りにも影響してくると言えるでしょう。
(2)「挨拶」から始める職方教育
工事監督には複数の管理業務が求められます。品質管理、コスト管理、工程管理、安全管理、顧客満足向上も含めれば大きくこの5つです。工事監督は、先述のITツールによって工程管理やコスト管理のサポートを受けられる分、品質管理や安全管理、顧客満足向上により努めることができます。労災ゼロの現場を造り込み、自身だけでなく、職方のレベルを向上させることも重要で、顧客満足にもつながります。
今回は職方指導という観点から、特に「挨拶」教育を取り上げます。これからの住宅会社にとって職方は重要な存在です。これは住宅を建設するという意味合いだけでなく、マナーなどを徹底できれば他社との差別化要素にもなりうるからです。常に現場にいる職方は顧客と会う機会が多く、職方にもマナーを基礎とした顧客対応力が求められています。そして、マナーの中でも基本となるのが挨拶です。職方の中には当然顧客とのコミュニケーションが苦手な方がいますし、会話スキルは伸ばしにくいものでもあります。しかし、挨拶に関しては意識次第で十分に改善できる要素と言えます。マナー研修の中でも挨拶のみにフォーカスした内容の研修があることもそのためです。
実際のところは、挨拶が定着しにくいということで悩んでいる住宅会社もあります。研修直後は満足のいく挨拶ができているのに、一定期間が過ぎると挨拶に元気がなくなったり、しなくなったりということも多々あります。これは、再度自社を省みる必要があるかもしれません。例えば、協力会社だけでなく、住宅会社全体として挨拶の文化が無い、あったとしても元気がない、またははっきり発音しない挨拶が蔓延しているという会社であれば、職方もその文化が伝染してしまうでしょう。自社で徹底できていないことを職方に押し付けることは難しいです。特に工事監督が現場巡回している時、どのように職方と挨拶しているかということも気に掛けるべきです。協力業者と関係が構築されてくると、挨拶が雑になりやすく、職方の姿勢にまで影響することがあります。
顧客は工事を一番心配しています。工事をちゃんとしてくれているか常に気にかけています。そして、そこで作業している職方を注意して視ています。そんな顧客との関係づくりも最初は挨拶から始まり、工事に満足してもらえれば次の紹介にもつながる可能性があります。挨拶には次の仕事を生み出す力もあることを忘れず、普段の業務を遂行していきたいものです。
(情報提供:住宅産業研究所)