イマドキの間取りトレンド~アウトドア編ハウスメーカー
前回は、最近の間取りのトレンドの1つとして、「家事シェア」提案をご紹介しました。家族構成や住まい手の価値観の変化によって間取りのトレンドも移り変わるものです。家族構成の変化の1つとして、世帯当たりの人員が減少しています。社人研の推計では、2010年は2.42人だった一般世帯の平均世帯人員は、2020年は2.26人、2040年には2.08人まで減少すると予測されています。
晩婚化と少子化で1夫婦当たりの子供の数が減っているということもありますが、それ以上に単独世帯が増加していることが、平均世帯人員が減っている要因です。世帯人員が少なくなるということは、住宅に必要な部屋数が減り、小型住宅の需要が高まるということです。実際に住宅の床面積は徐々に縮小してきています。
外と中との中間領域の空間を広げる
建物は小さくなってきていますが、敷地を有効活用する方法として、リビングにつながるウッドデッキ等、室内とボーダーレスになった室外空間も生活の場として活用するような提案が増えてきました。
旭化成ホームズでは、「アウトドアリビング」として、屋上やベランダでちょっとしたアウトドアを楽しめる提案を強化しています。昨年5月に発売した「のきのまent」では、玄関アプローチに最大深さ2.6mの軒を設け、アルミ樹脂複合デッキを敷いた「のきのま」のスペースとして、大開口の掃き出し窓でLDKと空間をつなげ、子どもの遊び場やDIYのスペースとしての活用を提案しています。基礎や床材を減らして屋外にも生活空間を確保するというコストダウンの狙いもありますが、屋外空間を活かしたコト提案は、他社との差別化にもなっているでしょう。
積水ハウスでは昨年10月、仕切りのない約30畳の大空間リビングで、家族がお互いの存在を感じながら思い思いの過ごし方ができるという間取り提案の「ファミリースイート」を発売しました。同商品の新コンセプトとして、今年3月発売のシャーウッド「グラヴィスベルサ」、同4月発売の軽鉄商品「イズ・ロイエ WA MODERN」では、大空間リビングと広いウッドデッキの軒下空間を大開口でつなげ、屋内と屋外との中間領域として活用する提案を取り入れています。
“外”の活用で新しいコト提案
屋外の空間を活かすアウトドア提案が上手い会社の一つが、ログハウスのトップランナーであるアールシーコアです。今年4月に発売した新商品「ワンダーデバイスGANG」では、同社の主力商品である「ワンダーデバイス」とログ小屋商品の「IMAGO」をセットにして、2つの建物をウッドデッキでつなぐ内外一体の暮らし方を提案しています。
「小さく建てて、大きく暮らす」をコンセプトとして、メインの「ワンダーデバイス」の延床面積は約22坪のコンパクトなプランですが、ウッドデッキと小屋を合わせると、約29坪を「暮らし面積」として使用できると訴求しています。建物の面積を小さくすることで、価格は税込1380万円(12月末までの期間限定・展示場来場履歴のある登録会員限定)と、かなり安く抑えています。住宅会社の商品説明は、建物の性能や構造、設備等に限定されがちです。
また、その建物での暮らし方提案も、主に屋内での暮らしが想定されます。屋内と屋外との中間領域の空間提案は、家の中だけでなく外でどう過ごすかという暮らし提案を広げることができ、他社とは少し違う切り口で新生活のイメージを膨らませられます。モノからコトへシフトしている時代と言われていますが、外とつながって自然を感じられること、そしてその屋外空間ではどんな暮らしが実現できるかというコト提案は、営業トークの大きな武器になるでしょう。
また、屋外に設けるウッドデッキ等の設備は、塗装などの定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスの案内や、簡単なメンテナンス方法を教えることをきっかけに、引き渡し後の施主と継続的にコミュニケーションを取ることで、将来のリフォーム提案や顧客紹介につながる可能性も広がります。
(情報提供:住宅産業研究所)