ビジネスの観点から見た空き家対策市場動向
総務省は4月26日、2018年度に実施した住宅土地統計調査の速報値を発表しました。これによると総住宅ストック数は6,242万戸、この内空き家は846万戸、空き家率は13.6%となりました。前回2013年度集計値よりも、住宅ストック数は179万戸(3.0%)増加し、空き家は26万戸(3.2%)増、空き家率は0.1ポイントの上昇に留まりました。都道府県毎に見ると、、、
最も空き家率が高いのは山梨で21.3%。次いで、和歌山20.3%、長野19.5%、徳島19.4%、高知県が18.9%と、甲信、四国地方で空き家率が高い傾向にあります。また、空き家率が低い地域としては、埼玉と沖縄が10.2%、東京10.6%、神奈川10.7%、愛知11.2%となっています。
ニュータウンの空き家対応策とは
1955年度以降、新興住宅地として郊外に開発されたいわゆるニュータウンは、空き家の問題に直面しています。当時子育て世代として移り住み、やがて子が巣立ち、夫婦だけの世帯となった後、マンションへ移住する、このほか様々な理由で徐々に空き家が増加しているニュータウンが多いようです。今回取り上げるのは、千葉県佐倉市の「ユーカリが丘」です。分譲開始から40年が経過したニュータウンですが、依然として成長を続ける街でもあります。成長に一役買っているのは山万という住宅会社です。大阪出身の企業でもともと佐倉とは関係の薄い企業ではありますが、同社は40年前の分譲地開発創世期に携わったことをきっかけに、今でも都市開発を継続しています。戸建住宅からスタートし、マンション事業、福祉施設事業も推進しており、山万タウンとも言える街が形成されています。
ユーカリが丘の人口はこの10年間で22%増えているとのことです。特に、小学生以下は56%増、未就学児は59%の増加、世帯数も33%増えており、郊外では珍しく基準地価も5年間で2.8%増加しています。街の活性化に貢献しているのは、2005年に始めた、かつての分譲住宅の再販事業です。地区内で新築住宅を購入する住民から古い住まいを査定額どおりで買い取り、修繕したうえで再販する。今の若者は中古住宅への抵抗感が以前と比べて少なく、都内からファミリーが移住してくることも多いようです。同社に関してはこれまで40年間ユーカリが丘を開発し続けたこともあり、この街のコミュニティを盛り上げるという思いが強いこともあるでしょう。
住民の世代が一回りしたところで、買い取り再販を切り口の1つとして、新しい住民を引き込んでいます。2018年末には、リハビリ型とカルチャー型の2種類のデイサービスと居宅介護支援を目的とした「ユーカリが丘住宅支援センター」を開設。山万グループの専門スタッフが、相続の相談や、介護改修等生活の変化に対応した自宅のリフォームや住替えの相談、また電球交換や庭木の手入れ、ハウスクリーニング、ホームセキュリティ等、高齢者の生活に関するあらゆる相談に対応しています。「ここに来れば何とかなる」というワンストップ拠点としてユーカリが丘の住宅地の中心に整備し、住民がより安心して住まうことができる街づくりを目指しています。
新しい空き家ビジネス、定額利用制度が始まる
サブスクリプションの流れが、空き家ビジネスにも到来しました。スタートアップ企業の株式会社アドレスがこの4月にスタートした、定額制の多拠点コリビングサービス「ADDress」です。「全国どこでも住み放題」をコンセプトに、空き家や有休別荘と泊まりたい人のマッチングを行っています。現在拠点数は全国13ヶ所。年間または1ヶ月毎の契約で月額4万円~となっており、会員期間中は、全国の拠点を自由に利用できます。各拠点は、個室を確保しつつも、シェアハウスのようにリビング・キッチンなどを共有していることが特徴です。
空き家や別荘を活用することでコストを抑えながら、リノベーションにより快適な空間を実現し、月額料金の中に光熱費、Wi-Fi、共有の家具やアメニティの利用、共有スペースの清掃が含まれています。また、会員同士の他、地域住民との交流の機会もあり、様々な地域で新しいコミュニティに出会えることが魅力の1つでもあります。既にサービス開始から予定していた上限の会員数に達するなど反響は上々です。今夏には全国20拠点、年内100拠点を目指すとのことで、新しい住宅の活用方法としても注目されています。
(情報提供:住宅産業研究所)