シニア層の住宅購入をサポートするサービス資金計画
日本の年齢別人口構成は高齢化が進み、3人に1人が65歳以上の高齢者という比率になるのも遠い将来のことではありません。シニア層の住宅需要への対策も考えておくほうが良いでしょう。人生100年時代に一般的なシニア層が建替え、住み替え等で新築住宅を購入するとなると、100歳まで豊かで快適な人生を送れるだけの資金は残しておきたいもの。長期のローンを組んだり、預貯金の大半を住宅購入資金に充てるというケースは少ないでしょう。シニア層の住宅購入資金の調達方法として、リバースモーゲージとリースバックという方法が注目されています。
自宅を担保に資金調達“リバースモーゲージ”
リバースモーゲージとは、自宅を担保に金融機関や自治体から融資を受け、死亡時に自宅を売却して残金に充当し一括返済する方法です。現在は様々な金融機関でリバースモーゲージと住宅ローンを組み合わせた金融商品が取り扱われるようになっています。住宅金融支援機構では09年から、金融機関と保険契約を結んで融資する新タイプのリバースモーゲージ「リ・バース60」を開始しました。60歳以上を対象として、住宅の新築や購入、借り換え、リフォーム等の様々な住宅資金に利用でき、最大で担保評価額の60%(長期優良住宅は65%)までの融資が可能な商品です。一昨年からは同商品に「ノンリコース(非遡及)型」というタイプを設けています。一般的なリコース型のリバースモーゲージは、担保物件の売却価格が残債に満たない場合、相続人が残債を返済する必要があります。一方、ノンリコース型では残債務の請求が相続人に及ばないというメリットがあります。ノンリコース型はリコース型に比べて住宅金融支援機構が負うリスクが大きい分、金融機関が払う保険料が高くなっています。現在「リ・バース60」の取扱金融機関は地銀なども含め49機関。「ノンリコース型」の導入以降、利用者数は増加傾向にあります。「リ・バース60」の付保申請戸数は16年度39戸、17年度は174件。18年度は4~12月の3四半期集計では348件で、直近集計の18年10~12月は152件となっています。18年10~12月の内容から利用者の傾向を見ると、ノンリコース型の利用が93%を占め、資金の使途は新築の戸建購入が50%、新築マンション購入が24%、リフォームが13%となっています。ローン借り入れの理由としては、建替えが53%、住み替えが18%でした。また、約6割は年金受給者ですが、まだ働いている現役世帯の利用も少なくないようです。
自宅売却後も済み続けられる“リースバック”
リバースモーゲージ以外で、自宅を活用して資金調達をするにはリースバックという方法もあります。自宅を専門の不動産会社へ売却し、買い主であるオーナーに対してリース料を支払うことで、引き続き自宅に住み続けながらまとまった現金を得られるという方法です。老後の生活費の確保や病気の治療費、事業資金を必要するシニア層にとって、買主を探す必要がないので現金化までの期間が短く、住み続けながら将来的に買い戻すことが可能な資金調達の方法と言えます。住宅業界では不動産仲介のハウス・ドゥや中古リノベのインテリックス、スター・マイカ等がリースバックを手掛けています。ハウス・ドゥのリースバック契約件数は1000件を突破し、日本一を謳っています。リバースモーゲージが条件に合わなかった場合でも、最短20日で現金化できる仕組みとして件数を増やしています。スター・マイカでは売却後に自宅に住み続けられる上、高齢者見守りサービスも付与した「あんしんリースバック」というサービスを設けています。
シニア層の住まい方の相談窓口の需要
シニア層の住まい方の選択肢は、新築戸建・マンションへの建替え、住み替えだけでなく、リフォームという選択肢もあり、夫婦のみで広さが必要ない場合は減築、子世帯と同居する場合は二世帯への増築も考えられます。その資金調達にはリバースモーゲージやリースバック等の新しい方法も出てきていますし、老人ホームなどの施設に移り住む場合は自宅の売却や、すぐに売らない場合は空き家の管理、子どもへの相続等、考えなければならないことがたくさんあります。地域密着型の地場ビルダー・工務店は、シニア層の住まい方の選択にアドバイスができる相談窓口の役割となれば、建替えやリフォーム、不動産売買・仲介等の見込み客を多く抱えることができます。相続セミナーや終活セミナー等で地域のシニア層を集客し、適切な住まい方のアドバイスをすることで、新しいビジネスにつなげられそうです。
(情報提供:住宅産業研究所)